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松山市、変革を担う“推進リーダー”育成に挑んだ1年がかりの研修を振り返る──修了後の適正配置が課題に

#3:愛媛県松山市 | 「試行錯誤の1年間」から課題を抽出する

職員の考える習慣がついたことが変化の兆し

 山田氏と豊嶋氏に「試行錯誤の1年」を振り返ってもらった。「運営面での反省点や改善点はたくさんありました」と豊嶋氏は言う。

 まず受講生については「やる気ある人は全員受けさせたい」と、公募に挙手した職員をほぼ全員を受け入れたために、運営面では様々な支障が生じたという。たとえば、研修会場は受講生の人数を絞ればもっと柔軟な開催が可能であったし、教育効果の観点からは講師の両補佐官から「もっと受講生を減らしてほしい」との意見も上がった。それゆえ、第2期では受講生を40名程度に絞っている。

 期間については、1年超では受講生のモチベーション維持が難しかったという。それゆえ、第2期では9ヵ月間(2025年7月~2026年3月)に短縮。毎年4月1日に定期人事異動があるので、それを跨がないようにも配慮した。

 第1期の受講者アンケートを見ると様々な意見があったという。「研修のあと、学んだ内容を現場業務でどう活かすべきか分からない」との厳しい意見が散見された。その一方で、「これまで自治体職員として、本当の意味で『考える』という経験が少なかった。今回の研修で、市民のこと、他の職員のこと、組織のことなど、様々なことを考えた。その習慣がついたことが最大の成果だと思う」とのうれしい回答もあったそうだ。

 インタビューの最後に、副部長の山田氏に本研修を振り返ってもらった。

 「松山市では、数年前に各課に一人ずつDXリーダーを任命しましたが、役割・責任が曖昧で機能しませんでした。モチベーションも上がらず、制度が形骸化して、名前だけのポストになった。その反省から、今回の研修では、受講者を手上げ制で募集しました。それゆえ、最後まで緊張感が維持されて良い研修となりました」(山田氏)

 筆者から「今後、この研修をどう活かしていくのですか?」と質問した。

 「2つあります。1つ目は施策に反映させることです。14個の提案の中には、すぐにでも実施可能なものや来年度予算を確保すれば実施できるものがあります。提案内容が実現することにより、職員の意識も高まります。2つ目は研修生の適正配置です。70名のうち何割かは来年に定期異動ですが、その際、今回の研修を極力活かせる部署へ異動させたいですね。これを数年間続ければ、組織が変わると思っています」と山田氏。

 「いずれもハードルが高そうですが、実現可能性はいかがですか?」と投げかけると、山田氏は「ある意味、研修を終えたここからが、我々の仕事だと思っています。総合政策部長も『ぜひ提案内容を実現しよう』と言ってくれてますし、人事課との交渉はこれからですが、がんばりますよ」と意気込んだ。

研修後の実効性が今後の課題 「まずやってみる」姿勢が重要

 松山市の事例を通じて、DX推進リーダー研修に関する課題を抽出したい。ポイントは2つ。一つは研修自体の実効性を高めること、もう一つは研修後の実効性を高めることである。

 1つ目の研修自体の実効性とは、受講者が目的に合ったマインド・知識・スキルを着実に得ることである。研修内容としては、知識付与型よりも「考える力」を養う演習が良いだろう。ただし、それに加えて技術スキルの習得など実践的な内容も含めると効果が高い。また研修の後半では、受講者のモチベーションを維持する工夫や各グループのリーダーへの支援も必要である。

 2つ目の研修後の実効性とは、受講生が現場へ戻ったときに、研修で得たものを活かせることである。これがないと「何のために研修を受けたのか分からない」との事態となる。山田氏の発言通り、そのために研修生(デジタル人材)を適正配置することは一つの解である。ただし、多くの自治体では、まだそこに至っていないのが現実であり、今後に期待したい。

 ちなみに、民間企業では、2020年からリスキリングブームが起こり、盛んに社内研修が行われたが、結果的に多くの企業では「研修は意味がなかった」との総括となっている。この反省から、現在トップランナーの企業では、業務で役立つマインド・知識・スキルから逆算して研修内容を検討している。たとえば営業部門では、市場のデータ分析を目的として、デジタルマーケティングに特化した研修を行うのである。今後、自治体DXにおいても、こういった発想で研修が進化していくことが望ましい。

 最後に、松山市の皆さんにこの場をお借りして感謝申し上げる。松山市のDXモデル人材育成研修は決して先進的な内容とは言えないが、「考える素材」として最適であった。いま自治体DXに最も必要なことは「まずはやってみる」という行動特性であり、その実践により自治体に知恵やノウハウが蓄積されるのである。その点、松山市の実践に敬意を表したい。

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この記事の著者

角田 仁(ツノダ ヒトシ)

1989年に東京海上火災保険に入社。主にIT部門においてIT戦略の企画業務を担当する。2015年からは東京海上のIT企画部参与(部長)および東京海上日動システムズ執行役員。2019年、博士号取得を機に30年間務めた東京海上を退職して大学教員へ転じ、名古屋経済大学教授や千葉工業大学教授を歴任した。現在...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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