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松山市、変革を担う“推進リーダー”育成に挑んだ1年がかりの研修を振り返る──修了後の適正配置が課題に

#3:愛媛県松山市 | 「試行錯誤の1年間」から課題を抽出する

 業務部門に在籍するDX推進リーダーの育成は、既に多くの自治体で研修等の取り組みを開始しているが、その実効性には疑問が残る。愛媛県松山市は、DX推進リーダー育成のために1年間かけて大規模な研修プログラムを実施した。今回は、同市デジタル戦略課の皆さんに「試行錯誤の1年間」を振り返ってもらった。最大の成果は「考える習慣」がついたことだという。本事例を通じて、DX推進リーダー研修の課題を抽出する。

「DX推進リーダー育成」が成否の分かれ道に

 DX推進リーダーとは、自治体でデジタル化・DXを推進する役割を付託された、DX推進部門(デジタル課、情報システム課)および各業務部門に1~2名ずつ配置される人材のことである。現在、各自治体ではDX推進リーダーの育成を図っているが、このうち後者の業務部門に在籍するDX推進リーダーの育成は非常に難しい。

 総務省の「自治体DX全体手順【第4.0版】」(2025年3月)にも「DX推進リーダーに対して集中的に育成プログラムを実施することが求められる」と記載されており、多くの自治体では研修等の取り組みを開始しているが、その実効性には疑問が残る。大規模な自治体の場合、DX推進は現場のDX推進リーダーの活躍に頼らざるを得ないが、その育成が難しいために、DXの進捗が芳しくないという自治体が多い。

 松山市は愛媛県の県庁所在地で、人口は約50万人。四国最大の都市であり、日本に62ある中核市の一つだ。市役所の職員数も一般行政職だけで2,000名以上が在籍し、課の数も100を超える大所帯。その規模から、デジタル戦略課が各現場をきめ細やかに支援することは難しく、DX推進リーダーの活躍こそがDX推進の鍵を握ると言える。

 松山市は、時事通信社が発表している「全国自治体DX推進度ランキング2024」において第56位(母数は全国1,700余りの市町村)に位置しており、いわゆる「トップランナー」の一つである。

 松山市では、2023年11月に策定した「松山市デジタル人材育成方針」に基づき、DXを推進する職員のうち、執行リーダー級(主幹、副主幹、主査)を「DXリーダー」、担当者級(主任、主事)を「DXスターター」と呼び、これらの人材育成に注力している。彼らはいわゆるDX推進リーダーであり、デジタル技術を使いこなして、各職場でDXを推進する役割の人材だ。

画像を説明するテキストなくても可

引用:「松山市デジタル人材育成方針

[クリックすると拡大します]

 同市は、DX推進リーダーの育成を目的に2024年から「DXモデル人材育成研修」を開始。これは約70名の職員を1年かけて育成するという研修プログラムであり、同市のデジタル戦略課ではこのプログラムにかなりの労力を割いてきた。

 本稿では、松山市総合政策部の山田慶人氏(デジタル担当副部長・前デジタル戦略課長)とデジタル戦略課の豊嶋涼氏(主任)の2人にインタビューして、同市のDXモデル人材育成研修について話を聞いた。

画像を説明するテキストなくても可

(左から)松山市 総合政策部 デジタル担当副部長 山田慶人氏、

同 デジタル戦略課 主任 豊嶋涼氏

与える研修から「自ら考える研修」に──70人の職員が集まる

 DXモデル人材育成研修の中身を見てみよう。期間は2024年7月から2025年7月の1年余り、全11回のプログラムである。受講者は庁内公募で自ら挙手した職員約70名。場所は毎回庁舎内の会議室で実施した。

 研修内容は、各グループに分かれて松山市の課題を論議し、その対策案を最終回の発表会で披露するという流れがメインである。また、その途中でデータ分析やデザイン志向、各種ツールの使い方など技術的な知識習得や、マネジメントやリーダーシップといったソフトスキルも学ぶ。実に盛りだくさんの内容だ。

 研修の多くの時間はグループワークに費やされた。受講者約70名を14グループに振り分け、各グループには極力違う部署の受講者を配置。大所帯の自治体で、お互いにほぼ初対面の状態のため、初回は自己紹介から始まった。

 グループワークで論議するテーマは「松山市が抱える課題」。同じテーマのグループには、解決手法として違うアプローチを採用するよう講師が導いた。本研修では、こういった論議に多くの時間を費やして、それまでの「与える研修」から「自ら考える研修」へと変革を促した。

 「公務員組織では、法令順守や業務品質維持の意識が強く、業務プロセスを変えることに慎重です」と豊嶋氏は言う。「もちろん慎重になることも重要ですが、地方はこれから人口がどんどん減少していくなかで、自治体にも変革することが求められています。今回の研修のように職員が自ら考えることで、少しずつでも組織文化を変えていきたいです」と話す。

 松山市では、DX推進の組織体制強化の一環として、2024年4月に外部からCIO補佐官2名を非常勤特別職として採用しており、両補佐官が研修の司会から技術面までほぼすべての講師を担った(一部、デザイン志向等の講師は外部から招聘)。

 2025年7月、研修の最終回として、半日間かけて全グループによる発表会を開催。発表は、CIOである副市長やDXを統括する総合政策部長などに施策を提案するという形式で実施された。とはいえ14グループもあるので、1グループあたりの発表時間は15分だけとやや駆け足だったが、緊張感のある発表会になったという。

 そして同月からは早くも第2期の研修プログラムをキックオフした。第1期の反省を活かして実施していく予定である。

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職員の考える習慣がついたことが変化の兆し

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この記事の著者

角田 仁(ツノダ ヒトシ)

1989年に東京海上火災保険に入社。主にIT部門においてIT戦略の企画業務を担当する。2015年からは東京海上のIT企画部参与(部長)および東京海上日動システムズ執行役員。2019年、博士号取得を機に30年間務めた東京海上を退職して大学教員へ転じ、名古屋経済大学教授や千葉工業大学教授を歴任した。現在...

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