金融機関が頼る“HAクラスター”の価値 AI時代の「止められないシステム」をどう守るか
複雑化する金融システムの課題と対策──4社の視点から “最適解”を探る:サイオステクノロジーの視点
システムに極めて高い可用性が求められる金融機関や特定社会基盤事業者を中心に、数多くのシステムを保護してきたHAクラスターソフトウェア「LifeKeeper」。これまで長らくオンプレミスや仮想環境で使われつづけてきた同製品だが、クラウドやAIの台頭で状況は変わったのか。金融業界を中心とした現況を皮切りとして、HAクラスターソフトウェアの過去・現在・未来について、サイオステクノロジーの吉岡大介氏とEnterpriseZine編集長 岡本が語り合った。
複雑化するシステム環境……いかに可用性を担保していくべきか
岡本(EnterpriseZine編集長):「LifeKeeper」は、システムの高可用性を担保するためのHAクラスターソフトウェアとして根強い支持を集めていますね。特に止まることが許されないミッションクリティカルなシステムを扱う特定社会基盤事業者や金融機関では、長らく使われてきたと思います。既に20年以上の歴史を持つロングセラー製品ですが、企業のニーズは変化していますか。
吉岡大介氏(以下、吉岡):昔ながらのオンプレミス環境では、LifeKeeperのような製品を用いて“HA構成”を組むことが当たり前という時代が長く続きましたし、仮想化の時代になってもそれは同様でした。しかし、クラウドが出てきたあたりから徐々に、HA構成の要件に対する理解や認識が少しずつ変化してきたと感じます。
岡本:具体的には、どのような変化が見られるようになったのでしょうか。
吉岡:一例を挙げると、「複数のアベイラビリティーゾーン(AZ)でシステム環境を構築すれば、可用性も担保できる」といったものです。しかし、それはあくまでもインフラ層の話であって、ミドルウェアやアプリケーションの可用性を担保するためには、やはりHA構成のような仕組みを別途設ける必要があります。
Head of Business Development 吉岡大介氏
また近年では、オンプレミス環境と同様のシステムをIaaS上に構築するだけでなく、マネージドサービスやサーバレスアーキテクチャ、コンテナ技術などを積極的に用いてアプリケーションを開発する企業も増えてきました。このようにシステム環境がどんどん多様化してくると、可用性を担保するための手段も複雑になります。
岡本:言ってしまえば、オンプレミス環境でサーバーなどを集中管理していればよかった時代は終わったということですね。クラウドが浸透するにつれてインフラの選択肢も増えていき、その上でも多様な技術が用いられるようになったことで、高可用性を担保する際にも考慮すべき事柄がより複雑化している。
吉岡:その通りです。インフラの選択肢が多様化してきたことで、異なるプラットフォーム上で稼働する多数のシステムを連携させることにもなります。つまり、いくつものシステムが複雑に絡み合っているような環境下では、1つのシステムダウンが他のシステムに影響を与えてしまう懸念も高まります。システムの可用性に対する要求は、ますます高まっていると言えます。
オンプレミスやクラウド、仮想化……止められないシステムをどう守る
岡本:可用性を担保することは、ミッションクリティカルなシステムを運用する金融機関や特定社会基盤事業者にとっても極めて重要ですよね。そうしたニーズにLifeKeeperはどのように応えているのでしょうか。
吉岡:金融機関や特定社会基盤事業者のお客様は、「システムを絶対に止めない」というミッションを遂行するため、他業種と比べるとクラウド化に慎重でした。しかし、今やメガバンクを筆頭にシステムの用途によっては、クラウドや生成AIなどを積極的に採用しています。
その結果、オンプレミスやクラウド、仮想化環境などでインフラが混在し、それぞれで複数の製品・サービスを使い分けているため、結果的にシステム運用が非常に複雑化しています。その点、LifeKeeperは主要なクラウドサービスはもちろん、その上で稼働するさまざまなアプリケーションやミドルウェアもサポートしていますから、複雑化しているシステム全体にわたってオペレーションを標準化できます。
岡本:LifeKeeperというと、これまではデータベースやサーバーの可用性を担保するための製品というイメージもありますが、最近ではファイル連携サービス「HULFT」やジョブ管理製品「JP1」、電子帳票システム「SVF」といったような、エンタープライズ向けアプリケーションを含む、多様な業務システムを保護対象とするケースが増えていますね。
吉岡:今名前を挙げていただいた製品は、どれもエンタープライズのお客様で広く利用されています。多くの金融機関や特定社会基盤事業者も導入しているため、可用性を担保するために「LifeKeeperと組み合わせて導入したい」というニーズが自ずと多いような状況です。だからこそ、お客様やSIerの皆さまに安心して製品を導入・利用していただくため、ベンダー各社と密接に連携しているのです。
岡本:ユーザーはどのようなメリットを享受できるのでしょうか。
吉岡:互いの製品を組み合わせても正常に動作することを、ベンダー側であらかじめ検証して保証対象にしていますから、事前の検証作業などがスムーズです。また、製品導入後に問題が発生した場合も、サポート窓口をたらい回しにされるようなこともなくなります。
さらにはLifeKeeperが保護対象とする製品の具体的なHAクラスター構成の構築手順についても、弊社や製品ベンダーが正式なドキュメントを公開している点も心強いでしょう。弊社でも、LifeKeeperをJP1やSVFなどと組み合わせて使うための方法をドキュメントとして公開しています。実際に「こうした情報公開やベンダー同士の連携体制が製品選定の決め手になった」という、お客様の声もよくうかがいます。
岡本:実際に、そうした連携が高い価値を提供できた事例を教えていただけますか。
吉岡:ふくおかフィナンシャルグループの一員で、「Wallet+」というモバイルアプリケーションを開発・提供しているiBankマーケティングでは、元々他の金融機関とのデータ連携にHULFTを利用しており、サービスのスケーラビリティをより高めるためにシステム全体をクラウド環境(AWS)に移行することになりました。そのとき「AWS環境上でHULFTの可用性をどう担保すればいいのか」という課題に直面したため、HULFTの開発元であるセゾンテクノロジーと弊社で連携し、HULFTとLifeKeeperの組み合わせをAWS上で利用するための情報を提供しました。これにより最終的にお客様には安心して採用いただけました。
岡本:ベンダー同士でしっかり連携して情報発信や製品の検証などを行っていれば、ユーザーはもちろんのこと、製品をユーザー先に導入するSIerにとってもメリットは大きそうですね。LifeKeeperは20年以上の歴史と実績を持つ製品ですから、金融機関や特定社会基盤事業者にソリューションを提供するSIerにとっても心強いと思います。ちなみにそうしたベンダー同士の連携の輪を、今後さらに広げていく予定はあるのでしょうか。
吉岡:はい。より多くのベンダーと連携することで、お客様の多様なニーズに応えていきたいと考えています。既に名前が挙がっているJP1やHULFT、SVFなどとは、LifeKeeperでHAクラスター構成にできる「Application Recovery Kits(ARK)」というオプション製品を提供していますが、それ以外の製品には「Quick Service Protection(QSP)」と呼ばれるOSのサービスとして起動・停止・監視ができるアプリケーションで、スクリプト開発なしに簡単な操作でHAクラスターを構成できます。
たとえば、セゾンテクノロジーが提供している「DataSpider」は、現時点でARKは提供されていないものの、QSPを使えば短期間でLifeKeeperの保護対象にでき、その動作検証をセゾンテクノロジーと実施済みです。
AI時代にも「HAクラスターソフトウェア」は欠かせない
岡本:「生成AI」の台頭でシステムの可用性に関する要件やニーズは、さらに複雑化することが予想されます。そうした中、今後どのようなソリューションを展開していくのでしょうか。
吉岡:LifeKeeperは「システムが落ちたらフェイルオーバーさせるためのツール」ですが、システムの可用性を高めるためには「そもそもシステムを落とさないための仕組み」を考えることも大切です。LifeKeeperをAPMツールやオブザーバビリティツールと連携させることで、システムダウンの予兆を検知できるような仕組みがあれば理想的ですよね。

さらには、収集したデータをAIに学習・推論させることで、システムダウンを防ぐためのより高精度な予測が可能になるかもしれません。そのように他の製品や技術とLifeKeeperをより広範に連携させることで、システムダウンをゼロに近づけるためのソリューションを実現していきたいと考えています。
岡本:LifeKeeperはシステムの稼働状況に関するデータを豊富に抱えている、いわば「データの宝庫」ですから、それらをAIで有効活用することで大きな可能性が拓けそうですね。
吉岡:LifeKeeperにAIを適用していくことはもちろん、今後AIが世の中にどんどん普及していけば、より多くの仕事がAIアプリケーションによって代替されていきますから、ビジネスがITに依存する割合もさらに高くなります。つまり、システムの可用性がビジネス全体に与える影響度もより大きくなりますから、HAクラスターソフトウェアが担う役割もより重要性を増していくことでしょう。
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提供:サイオステクノロジー株式会社
【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社
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