SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Security Online Day 2026 Spring

2026年3月 オンライン開催予定

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2025年夏号(EnterpriseZine Press 2025 Summer)特集「“老舗”の中小企業がDX推進できたワケ──有識者・実践者から学ぶトップリーダーの覚悟」

DB Press

「デジタルバンク先駆者」が進める活用のためのデータカタログ整備──“全社データ文化”を醸成する仕掛け

みんなの銀行は、一度失敗したデータマネジメントをどう立て直した?

“データ活用”のためのカタログ管理に:取り入れたビジネスメタデータとは

 本嶋氏は、データカタログの整備内容について「システムメタデータに加えてビジネスメタデータと品質の整備を実施しました」と話す。たとえば、従来は「1:登録中/2:登録成功」といったシステムメタデータのみだったが、そこに加えてコード値の具体的な意味、コード値のステータスの遷移状況、実際にみんなの銀行のアプリでユーザーがどのような操作をしたときにコード値のステータスが遷移するのか、といったデータの紐づけまで詳細化して行った。

 特に、ステータス遷移の詳細化は重要な改善点だったという。

 「たとえば、ステータス遷移のパターンとして『1→2』のように一方通行で進んでいくのか、『9→1』などループしたりするのかといったデータの状態把握は分析業務において不可欠でした。これまで暗黙知として扱われていた情報を明文化することで、多様な部署でのデータ活用や効率が大幅に向上しました」(本嶋氏)

 あわせて、疑問点が生じた際の問い合わせ先の明示や、分析環境へのデータ投入タイミングの整備なども実施するなど、実用性重視の姿勢が成果につながったという。

講演資料より抜粋
[画像クリックで拡大します]

データが支える“最先端”の金融イノベーション──3つの活用事例

 本嶋氏は、みんなの銀行で行われているデータ活用の取り組み事例をいくつか紹介した。その一つが不正口座のモニタリングシステムだ。同行では口座開設時にビデオ通話で対象者の顔画像を取得し、本人確認書類とともに顔の特徴量を分析している。これにより、同一人物による複数口座作成や口座売買、詐欺口座への利用といった金融犯罪の防止を図っているとした。

 この取り組みの背景には、デジタルバンクが直面する特有のリスクがある。従来の銀行と異なり、対面での本人確認が困難なデジタル環境では、より高度な不正検知システムが不可欠となるからだ。

 次に紹介された事例は、与信モデルの内製化だ。同行はミレニアル世代、Z世代といった若年層をのターゲットとしているため、既存のローン審査モデルが顧客層になかなかマッチしないという課題があった。そこで社内のデータサイエンティストが様々なデータを組み合わせて最適化したモデルを構築。本嶋氏は「このモデルをベースに、実際にローンの審査を実施しています。ここまでやっている銀行はなかなかないと思います」と先進性を強調した。

 続く事例は、口座開設者のネットワーク分析。同行では招待コードを使った口座開設キャンペーンを実施しており、招待コードがどのように広がっているかをデータで見ることで、口座開設の輪の広がりを分析している。ユーザーの招待コードの連鎖から、特に拡散力の高いインフルエンサーの属性分析を行い、効果的なマーケティング戦略の策定につなげているという。

リスクと価値創造を両立する「守り」と「攻め」のガバナンス体制

 これらの事例に加えて同行では、レコメンド、KPIのモニタリング、BI(ビジネスインテリジェンス)の分野でもデータ活用を進めているところだ。こうしたデータ活用の拡大とともに、みんなの銀行はデータガバナンスの整備にも注力している。本嶋氏はデータガバナンスの目的を「データによって企業価値を最大化すること」と定義する。

 「“守り”だけやっても新しい価値を見出せませんし、“攻め”だけやって情報漏えいなどがあってはなりません。データガバナンスは守りと攻めの両輪で進めていく必要があります」(本嶋氏)

 具体的な取り組みとして、同社では方針から要領・マニュアルまで包括的な規程類とガイドラインの整備を実施。その頂点にあるのが「データ利活用プリンシプル」で、基本的な考え方や行動指針を定義したものだ。このプリンシプルによって、抽象的になりがちな原則を身近なものとして浸透させている。

講演資料より抜粋
[画像クリックで拡大します]

 データ活用の統制にあたっては、将来的なデータ民主化を見据えた「部分的中央集権」という独自のアプローチを採用している。データを活用したいビジネス部門がデータ専門組織に依頼するといった中央集権型のアプローチでは、品質こそ担保できるものの効率性に課題がある。とはいえ、行き過ぎたデータ民主化を行ってしまうと、データの品質が保たれずカオス状態になるリスクも生じる。

 そこで同社では、この間をとった部分的中央集権を促すため、BIツールを導入して利用できるデータを制限し、テーブルの結合条件も事前に定義。参照できるツールやデータを許された範囲内で自由に活用できる環境を実現している。ただし本嶋氏は、「このやり方を未来永劫続けるのではなく、徐々に民主化を進めていきたいと考えています」と話す。

講演資料より抜粋
[画像クリックで拡大します]

次のページ
大幅に変えた組織体制、全社一丸でデータ文化を醸成する仕組み

この記事は参考になりましたか?


広告を読み込めませんでした

広告を読み込み中...

  • Facebook
  • X
  • note
DB Press連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/22826 2025/11/21 08:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング