大幅に変えた組織体制、全社一丸でデータ文化を醸成する仕組み
データマネジメントの一環として、体制の変更も行った。同社では銀行業務を担うみんなの銀行とシステム開発を手がけるゼロバンク・デザインファクトリーの2社体制を採用していたが、2025年からデータ組織を統合している。「データサイエンティスト(ビジネス側)とデータエンジニア(開発側)の業務の境目がどこにあるかは会社によって違うと思いますが、我々の中でもそこが曖昧で、『この相談事はエンジニアに聞くべきかサイエンティストに聞くべきかがわからない』といった状況がありました」と本嶋氏は統合の背景を説明する。
組織を統合したことで内部連携が強化され、外部からの見え方も明確になったという。育成やキャリア形成の面では将来的な選択肢が増えるという効果も生まれている。
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ただし、この組織統合には課題もある。データエンジニア、データサイエンティストともに専門領域をカバーするためには、統計スキル、プログラミング、AI・機械学習からデータ連携・開発、インフラ設計など幅広いスキル・ノウハウが必要だ。「そこを管理するのは難しい面もあり、課題も残ります」と本嶋氏は明かす。
組織統合に加え、データマネジメントオフィス(DMO)という横断組織も新たに設立。データサイエンティスト、データエンジニア、社内のリスク管理部門やコンプライアンス部門が一体となって運営しており、データカルチャーの醸成、育成計画の策定、全社のデータ利活用推進、問い合わせの窓口などといった役割を担う。
さらに教育・啓蒙活動では、全社員対象のオンボーディング施策を実施。中途入社が多いという同社の特性を活かし、入社時点でデータの重要性やデータ活用方針をレクチャーする仕組みを構築するなど、組織全体のデータリテラシー向上を図っている。
このように様々な変革を行ってきた同行だが、システム内製化が競争優位性を確立する上で大きなポイントになっていると本嶋氏。「ツール導入時にシステムの変更が必要になっても、外部委託の受発注関係がないため、スムーズに内製環境で実施することができました」と述べる。
今後の展望として、本嶋氏は4つの方向性を示す。第一にスモールスタートした領域を全社に拡大する領域の拡大、第二に一層データ活用できる環境の整備、第三にマインド・スタンス・文化を作っていく教育・啓蒙、そして第四に「作って終わり」ではなく、多面的に整備していく運用定着を挙げた。
「スモールスタートした領域の拡大に関しては、領域を増やすだけではなく、取り組むチームを増やしていくことを考えています。インフォマティカのツールについてもカタログ管理以外の豊富な機能の検証を進め、使い倒していきたいです」(本嶋氏)
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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