中国銀行は、全社規模でアナリティクス/AI基盤「SAS Viya」を導入することを決定した。このプロジェクトは、SAS Institute Japan(以下、SAS)とコムチュアとの3社連携により推進され、従来のシステム導入の枠を超えた「新たなDXモデルの創出」を目指すという。本稿では、2025年10月16日に行われた記者発表会およびグループインタビューの様子を通して、同行の戦略を掘り下げていく。
地方銀行初、アナリティクスAI基盤「SAS Viya」を全社規模で導入
岡山県岡山市に本店を置く中国銀行は現在、2023年4月にスタートした中期経営計画を実行中だ。同行は「地域・顧客・従業員と分かち合える豊かな未来を共創する」という経営理念を掲げ、これの実現に向けた重点課題のひとつとしてDX推進を位置づけている。
2024年5月に策定された「ちゅうぎんDX戦略」のコンセプトは、「想いをつなぐDX」。この戦略は、同行グループ自身がDX企業となり、顧客をリード・サポートすることで地域社会をともにデジタルでデザインしていくことを目的としている。
このDX推進の根底には「人・地域ありき」というキーワードがあるという。中国銀行で取締役を務める山縣正和氏は、DXを進める最大の目的について「当社最大の財産である人材をより輝かせるため」と説明する。なかでもデータ・AIの活用が、地域にとってより魅力的かつ有益なサービス提供につながると語った。
共創プラットフォーム構築で、DX推進を加速させる方針だ
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今回、中国銀行は社内データを活用し、顧客へのコンタクトの高度化を図るため「SAS Viya」を中心としたアナリティクスAI基盤を全社基盤として整備した。導入は2025年4月に検討が開始され、稼働は2027年1月に開始する予定だ。この基盤導入により、同行は以下3点の実現を目指すという。
- 仮説設定の高度化:地域や顧客の潜在的なニーズや課題をこれまで以上に早く、高い精度で発見しアプローチする
- 顧客体験の革新:仮説に基づくパーソナライズされた案内や提案を最適なチャネルで実施し、顧客満足度を高める
- 意思決定の迅速化:経験や勘に加えて、データ分析とAIの知見に基づき、経営戦略や営業戦略における迅速な意思決定を実現する
特に、意思決定の迅速化について山縣氏は「変化の激しい現代において、経営戦略や営業戦略の意思決定の重要性は日々高まっている」とその背景を語る。現状、同行ではビジネス戦略を立てるにあたって必要な情報(個人預金の動向や新商品の効果など)を経営層が得ることに時間がかかり、意思決定が遅れてしまうという課題があった。今回の基盤導入によって、より迅速に必要な情報が集められるようになると期待が高まっているという。
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