「1週間で6時間分の生産性が失われる」との試算も
ガートナーでは、企業におけるデジタルワークプレイスの成熟度について、Webサイトでの自己評価アンケートを通じて調査している。グローバルでは、レベル2(適応型)に位置する企業が51.4%と最も多く、31.7%がレベル3(支援型)に位置するなど、ほとんどの企業がいまだエンドユーザー向けサービスの領域(レベル2以下)にとどまっているという。
また、日本企業における成熟度スコアの平均は2.1となり、北米や欧州(2.3〜2.4)と比較してやや低い傾向にある。特に日本の回答者には、名称はデジタルワークプレイスとしているものの、実質的な成熟度はエンドユーザー向けサービスにとどまっているケースも見受けられるという。
このようにグローバル規模で、多くの企業がレベル2にとどまる状況について、単に遅れているのではなく、「先に進もうとする動きは見られるが、そのペースがゆっくりとしている」とウィルソン氏。デジタルワークプレイス変革を加速できなければ、業界におけるリーダー的な立ち位置を失うことにつながるとも指摘する。
たとえば、デジタルにまつわる摩擦やストレス(デジタルフリクション)が大きければ、(1人あたり)1週間で6時間分の生産性が失われるとの試算もあるという。また、利用しているアプリケーションに不満がある従業員は、満足している従業員と比べて、社外に職を求める可能性が2.3倍も高くなるというから驚きだ。
人材流出といえば、これまでは人事部門の問題だった。しかし、今ではIT部門の問題として重くのしかかっており、「IT部門はテクノロジーが従業員の精神面にも強く影響を及ぼすことを理解し、従業員のニーズを満たすことが求められている」とウィルソン氏は説明する。
さらにAIの登場がデジタルワークプレイスの進化に大きな影響を与えている。Webやモバイルに至るまでのテクノロジー進化が十数年あるいは数十年単位だったのに対し、AIの進化は極めて速い。企業がChatGPTを導入しても、なかなか成果が出ない例は多いだろう。これは単にテクノロジーを従業員に与えるだけでは不十分であり、コーチングやメンタリングなどを通じて、「テクノロジーを正しく適切に使える」ようにサポートすることの必要性を示している。
ガートナーの調査においては、企業における今後1年間の優先課題として、「従業員に対するAI導入」が51%と上位にランクイン。前述したように、単にツールや最新技術を導入すれば解決できる問題ではなく、AIによって業務現場を変革することが重要だ。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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