変革を成功に導く、5つの重要なステップ
デジタルワークプレイス変革を成功させるには、「評価軸の転換と社内連携が不可欠だ」とウィルソン氏は指摘する。多くの企業において、デジタルワークプレイスは予算やコスト管理で評価されており、従業員体験に関わるスコアなどは評価基準の下位に位置しているのが現状だ。
「結果を変えたいときにルールを変更するように、評価軸をコスト削減から従業員体験やリレーションの向上に移し、(従業員に)インセンティブも設定すべきだ」(ウィルソン氏)
IT部門は技術的負債だけでなく、“経験(エクスペリエンス)の負債”にも目を向けるべきだという。そこでデジタルワークプレイス変革の一歩目として、人事部門とIT部門のパートナーシップが有効だとする。
また、ガートナーとしては「5つのステップ」で取り組みを進めるべきだとして、下図を提示。基盤構築からはじまり、徐々にデジタルワークプレイスを強化していく流れだ。
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- 基本へのフォーカス:一貫性があり測定可能なサービス、柔軟でコスト効率の高いテクノロジー、最新のデバイス管理機能、従業員ごとにパーソナライズされたITサポート機能など、デジタルワークプレイスの基盤に求められる要素を押さえる
- 柔軟な戦略:デジタルワークプレイス変革を進めている企業の多くが戦略を定義しており、93%の企業が業務に適合させている。従業員中心の戦略を持つデジタルワークプレイス組織は、その成熟度が52ポイントも高くなる
- 近代的な組織設計:組織機能を集約し、イネーブルメント(活用促進)を重視した「デジタルワークプレイス・オペレーティングモデル」へと再構築することを目指す。成熟度の高い組織では、「ワークプレイス・エンジニアリング」「イネーブルメント」が新たな機能として組織図にも組み込まれている
- DEX(デジタル従業員体験)へのフォーカス:DEXにフォーカスすることで、従業員エンゲージメントの向上、オペレーションコストの削減、デジタルフリクションの削減、報告されない問題の可視化など、多岐にわたるメリットが得られる
- パートナーシップの活用:デジタルワークプレイスは、組織内の「つなぎ役」となる存在。IT部門が連携すべき主要部門は、人事や財務、施設管理、サイバーセキュリティ、法務、そしてビジネス部門のリーダーなどが挙げられる
企業にとって、デジタルワークプレイス変革は避けて通れない道だ。IT部門と人事部門が戦略的なパートナーシップを組み、評価軸をコスト削減からデジタル従業員体験の向上、そして「ビジネス価値の創出」へと転換し、変革を加速していくことが強く求められる。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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