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「セレンディ」で変革をめざす三菱電機、「匠Method」と「アジャイル」で推進

三菱電機DXイノベーションセンター×萩本順三氏インタビュー

 三菱電機が「モノを売って終わり」から脱却し、顧客や社会とつながり続ける新たな価値創出に挑む。「匠Method」とアジャイルが化学反応を起こした現場、老舗製造業の大転換の最前線を追う。Serendie(セレンディ)が生んだ共創の力とは何か。

(左より)匠Business Place会長 萩本順三氏/三菱電機株式会社 デジタルイノベーション事業本部 DXイノベーションセンター 開発・品質管理部部長 細谷泰夫氏/同 DXイノベーションセンター 戦略企画部主任 伊勢山諒氏/同 DXイノベーションセンターセンター長/執行役員 朝日宣雄氏

横浜に生まれた三菱電機の"化学反応"の現場

 横浜みなとみらいの一角に、連日、多くの企業が訪れる場所がある。三菱電機が2025年1月に開設した共創空間「Serendie Street Yokohama(セレンディストリート横浜)」だ。1日平均10社以上、開設から約1年で約1.2万人が来場。19個のスクラムスペースでは、鉄道のプロフェッショナル、電力の専門家、IT業界のアジャイル実践者たちが、部門を超えて活発に議論を交わしている。

 創業105年(2026年2月1日時点)の三菱電機が仕掛けるのは、「製造業の常識を覆す」挑戦だ。製品を売って終わりではなく、顧客と繋がり続けることで価値を生み出す「循環型 デジタル・エンジニアリング」。その実現の鍵を握るのが、日本発のビジネス変革手法「匠Method(たくみメソッド)」と、20年かけて育んできた「アジャイル文化」だった。

「手離れの良い製品」という呪縛

 「会社に入ってから、事業部長や所長が『手離れの良い製品が良い事業だ』と言っていました。売ったら販売店やサービス会社に任せる。これが一番美味しいのだと」

 執行役員DXイノベーションセンター長を務める朝日宣雄氏は、こう振り返る。朝日氏が経験した携帯電話事業の教訓は、今も鮮明だ。3G時代、1機種作るのに100億円近くかかった。しかし4G時代になると、GoogleのAndroidやAppleのiOSが登場し、ソフトウェアのアップデートが当たり前になった。

 「一気に負けてしまったと感じました。完全にソフトウェアやコンテンツの売買に引っ張られて、製造業がいつまでたってもコモディティ化に追いつこうとコストを下げて競争力を保つ。そこが行き詰まると撤退に追い込まれる」(朝日氏)

 三菱電機は不思議と「神風が吹いた」会社だった。1つの事業が悪くなっても、他の事業がカバーする。V字回復する。そのため危機感が醸成されにくかった。しかし、その「神風」はもう吹かない──。

 転機は2022年。当時の漆間社長が「循環型 デジタル・エンジニアリング」を掲げ、ビジネスエリアオーナー制度を導入した。複数の事業本部を束ねる横断組織だ。課題は明確だった。「コングロマリットディスカウント」──複数事業があることが企業価値を下げるという評価だ。縦割りでクラウドを立てる限り、複数事業を持つ強みは発揮できない。

 そこで、事業横断で循環型 デジタル・エンジニアリングを推進する組織として、2023年4月、DXイノベーションセンターが誕生した。

18人で始まった変革、そして「匠Method」との出会い

Serendie Street Yokohamaでの細谷氏、萩本氏、朝日氏、伊勢山氏

 朝日氏が責任者に指名され、初期メンバー18人で活動を開始した。特徴的なのは、技術者だけでなく、リーガル、知財、営業経験者を配置したことだ。

 「どこかを他の部門に依頼してしまうと、格段にスピードが落ちるからです」(細谷氏)

 DXイノベーションセンター開発・品質管理部部長の細谷泰夫氏は、こう説明する。現在は90〜100人規模に成長し、ソフトウェア基盤、ソリューション企画、開発品質管理、データ分析、運営・マーケティング、戦略統括の6部門体制だ。

 しかし、組織を作っただけでは変革は起きない。必要だったのは、「価値起点で考える」ための共通言語だった。

 細谷氏が注目したのが、日本発のビジネス変革手法「匠Method」だ。匠Business Place会長の萩本順三氏が2008年に開発し、すでに200社以上に導入されている。細谷氏は2018年頃から匠Methodに注目し、一部部門で導入を進めてきた。

 匠Methodの核心は「価値起点」にある。戦略や計画から考えるのではなく、「自社が本当に社会や顧客に提供したい価値は何か」という根源的な問いから出発する。そこに自社の強みや思いをミックスしていくことで、従来にない発想やサービスの実現につなげる。

 「匠Methodなら、顧客起点で我々の持つ強みをうまくミックスして製品企画を進められる。奥は深いがとっつきやすく、シンプルなメソッドだとも感じていた」と細谷氏は語る。

 匠Methodには5つの特長がある。1)アイデアの価値創出から事業モデルへの一気通貫、2)DX思考の自然な育成、3)手法であり思考法でもある点、4)アジャイル型ビジネス推進、5)あらゆるプロジェクトへの適用可能性。特に注目すべきは、匠Methodが「アジャイル型ビジネス推進」を内包している点だ。これが、細谷氏が20年かけて育んできたアジャイル文化と共鳴することになる。

 2024年、この取り組みに「Serendie(セレンディ)」という名前をつけた。そして、Serendieの最初の成功事例には、匠メソッドの存在が不可欠なものとなった。

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鉄道向けサービスに見る「価値起点」の威力

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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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