イオン×ファミマが議論、小売業界におけるAI活用の実態──ボトムアップ型で進めた施策の裏側と現状課題
AI活用における社内浸透のカギは「誰が語るか」 実際の事例から、成功の秘訣を学ぶ
ファミマが取り組む、AI活用を「飽きさせない」ための工夫
イオンと同じく大規模な小売企業であるファミリーマートでも、生成AIの活用は着々と進められているという。同社 山中伸哉氏が所属するクリエイティブオフィス&8では、各本部の課題を「横串」で解決し、将来の収益基盤となる新規事業の創出をミッションに掲げ、様々な施策に取り組んでいる。
同社が生成AIを意識し始めた時期は、2023年の5月頃に遡る。世間で「ChatGPT」が注目され始めた時期に、ファミリーマートもすぐに関心を抱いたという。そこから、生成AIを社内導入することで得られる効果などをクリエイティブオフィス&8内で研究し始めた。
その後、生成AIが業務効率化だけでなく顧客体験の向上などにも役立つ可能性があることを知り、導入に向けて準備を進めたそうだ。当初は自社内での内製開発なども候補に挙がっていたが、最終的にエクサウィザーズの製品を導入し、生成AI活用の基盤を整えるに至った。
実際の活用事例について見ていこう。同社はまず、各店舗を巡回するスーパーバイザー(SV)や営業所長、リージョン部長などにアカウントを付与した。しかし、アカウントを付与した当初は「AIを何の業務に活用すればよいのかわからない」といった声もあがったという。徐々に、多言語に対応したPOPの作成にAIを活用する事例なども出てきたが、AIを使いこなせる人と使いこなせない人の差がどんどん開いてしまった。これに対し、同社は大胆な戦略に出る。AI活用を、社員の人事評価(MBO)指標に組み込んだのだ。
ところで、なぜ同社は現場社員へのアカウント付与からスタートしたのか。全国に存在するSVの業務は多岐にわたるが、北海道の店舗で取り組んでいる仕事と九州で取り組んでいる基本的な仕事に大きな違いはないという。つまり、「SV一人の成功事例が、全国に一気に横展開できる可能性がある」と踏んだのだ。
また、AI活用の推進にあたっては「経営層の理解を得ること」を重視したという。「現場で草の根活動的にAI活用を進めているだけでは、『どんどんAIを使っていこう』というマインドも醸成されづらいだろうという肌感があった」と山中氏は語る。経営を巻き込んだ施策の重要性を実感した同氏は、生成AI導入直後と導入から約2年後の計2回、経営層向けの生成AI勉強会を開いた。
多くの経営層が懸念するハルシネーションや情報漏えいの問題、実際にAIを活用して効果は出ているのかといった疑問に対し、エクサウィザーズの支援も受けながら説明したという。
「経営層は、各本部・各部の細かな業務までは把握しにくいと思います。そのため、生成AIを活用することでどう業務が効率化されるのか、自分一人ではイメージしづらい。勉強会では、『そもそも部下がどのような仕事をしているのか』『AIを使うことでどう業務が変わるのか』に焦点を当てて説明したことで、説得力が出たと感じています」(山中氏)
一方、AI活用を社内に定着させるためには、どのような施策を打ったのか。同社は、全社員向けの施策として「生成AIコンクール」なるものを開催したという。これにより、活用における“飽き”を防ぎ、埋もれたベストプラクティスを発掘することができる。
たとえば、営業所長がSVへの確認事項を自動でメール配信し進捗を確認するツールや、毎週の営業所会議で共有される加盟店への伝達事項のチェックリスト自動作成ツールなどが同コンクールで入賞している。エントリー作品は全社のポータルサイトに掲載し、内容がすべて見られるように設計したとのことだ。
また、オンラインのランチ勉強会も開催している。前半30分は講義形式のレクチャー、後半30分は参加者からの質問コーナーで構成されており、「後半の質問コーナーが有意義な時間になっている」と山中氏は語る。社員が今AI活用において課題に感じていることや、各部署でのユースケースなどを話し合う場所として機能していることで、よりAI活用が浸透している。
同氏は最後に、AI導入〜活用に関して、以下3点が重要だとまとめた。
- 計画的導入:計画に基づき、現場(SV)から展開して浸透スピードを加速させる。また、コンクールを実施し活用事例を横展開する
- 推進体制:定期的に勉強会を開催し、疑問点や活用事例を学べる場をつくる
- 経営層への見える化:利用進捗、活用事例、業務効率化定量数値を経営層へインプットする。また、経営トップから生成AI活用を発信してもらう
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