イオン×ファミマが議論、小売業界におけるAI活用の実態──ボトムアップ型で進めた施策の裏側と現状課題
AI活用における社内浸透のカギは「誰が語るか」 実際の事例から、成功の秘訣を学ぶ
AI活用における社内浸透のカギは「誰が語るか」
──AI導入を推進して「よかった」と思うことは何ですか。
沖中氏:「これまで課題だと思っていなかったことが、課題だと認識されるようになった」ことですかね。たとえば、社内ルールの表記揺れを手作業で直していた業務。以前は「めんどくさいけど、そういうものだ」と受け入れられていましたが、AIならできるはずだと思った瞬間に、それは解決すべき「課題」に変わります。この気づきが組織のあちこちで起こっていることが、最大の成果です。
山中氏:同感です。それに加えて、ファミリーマートでは「無駄があぶり出された」効果が絶大でした。上司への報告のための膨大な資料作りですが、「実は誰も読んでいなかった」なんてこともありました。私の部署では、AI活用にともない毎週2時間の進捗報告会議をやめました。代わりに、レポートを生成AIに読み込ませて要点を確認する。上司への報告資料も「壁打ちのメモレベルでいい、スライド変換して見れば内容はわかるから」とクオリティを割り切ることで、本来やるべき創造的な仕事に時間を使えるようになりました。
S氏:現場視点で言うと、私は「できないと思っていたことができるようになった」ことが、やはり一番の成果です。以前は報告書を作るためのデータ集計だけで1日が終わることもありましたが、今はAIに投げれば数分で形になる。周りのメンバーもそれを見て「自分もやりたい」と言ってくれるようになりました。
沖中氏:AI活用を社内で浸透させるという文脈で補足すると、Sさんのような現場で活用を推進させる方の存在は本当に大切だなと感じます。イオンではコミュニティを発足したという話をしたかと思うのですが、最初は我々デジタルアカデミーのメンバーが声をかけても、入会してくれるのは十数名程度だったんですよ。
それが、Sさんがご自身の取り組みを勉強会でプレゼンし、コミュニティの入会を促したら、すぐに100人以上のメンバーが集まった。やはり、AI活用を浸透させていくうえで「誰が語るか」という視点は大事だなと思いましたね。
山中氏:それで言うと、ファミリーマートでもランチ勉強会を開いていますが、勉強会に参加してくれた人が自部署で生成AIの推進を担ってくださるような事例もあります。それ以外にも、似たような業務を行っている人同士で集まって自主的に勉強会を開くといった、自発的に動いてくれる部署が出てきたことは嬉しく思います。
──最後に、AI活用における今後の展望を教えてください。
山中氏:日本のAI活用は「コスト削減」や「人減らし」の文脈で語られがちですが、我々はそこを目指していません。最終的には、お客様が「用がなくてもファミリーマートに行きたい」と思ってくれるような、ユーザー体験向上にAIを取り入れたい。若い世代がワクワクするような体験を、AIの力を借りて作っていきたいと考えています。
沖中氏:私は「AIを使う」フェーズから「AIを使って新しい業務プロセスを作る」フェーズへ、みんなを連れていきたいです。リテール業界は世界で最もお客様とのタッチポイントが多い業界。他社とも競争領域を超えて協力し、AIを活用して新しい付加価値を社会に提供していきたいと考えています。
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