情シス一筋30年:PCもAIも、時代は変われど「どう提供するか」がその後の生産性を左右する
第43回:バンダイナムコ ホールディングス 情報システム部 ゼネラルマネージャー 暉由紀さん
AIの使い方は千差万別 だからこそ、追求するのはデータの質
酒井:AI活用についても聞かせてください。
暉:事業側でのAI活用は様々です。グループ内にはAIを専門にしている会社もあるなど、グループ会社が事業特性に応じて取り組んでいます。私の役割は、ガードレールを作ることですね。AIが勝手にデータを読み回る環境を放置するわけにはいきませんから、ルール整備は今まさに取り組んでいるところです。
コーポレート部門では、昨年「AI活用チャレンジ」というキャンペーンを実施しました。手挙げ制で、「この業務課題をAIで解決したい」と宣言した人にCopilotを渡して伴走するというものです。約150人が参加し、半数はそのままCopilotが業務に定着しています。解決方法がAIではないという結論に至ったものもあり、もう半数はクローズしましたが、AI活用をきっかけに業務改善に目が向くようになったという効果がありました。
酒井:やってみて、気づいたことはありますか?
暉:AIの使い方は人それぞれだということです。持論ですが、仕事の相棒としてAIとうまく付き合うには、自分なりの聞き方と、返ってきた答えの解釈の仕方を身につける必要がある。AIにも調子がいいときと悪いときがありますよね。「今日は調子悪いな」と思ったら、「今日は君の意見は聞かないことにするよ」と切り替えられるかどうか。その見極めができないまま使っていると、ダメだったときにだまされたような気持ちになってしまう。一人ひとりがAIとの付き合い方をつかめてくると、生産性は上がっていくんだろうなと思っています。
酒井:万人に効くマニュアルはない、ということですね。
暉:それと、実は半年かけて全社で使えるプロンプトを100本用意したことがあるんです。精度も良かったですし、専門の会社と協力して一緒に参加した情報システム部のメンバーにとっても学びも大きかったのですが、AIの進化が速すぎて、できあがった頃にはもう陳腐化していました。以前はきちんとしたプロンプトでないとまともな答えが返ってこなかったのが、今はモデル自体がかなり賢くなっている。もはやプロンプトを追求する方向ではないなと。
では何を追求すべきか。自分たちが持っているデータの質と量です。あるセミナーで、講師の方がリアルデータを使ってCopilotの実演をしてくれたことがありました。すごい精度で答えが返ってくる。こちらも張り切って同じようにやってみるんですけど、まったく精度が出ない。持っているデータの質がまるで違うからなんですよね。
酒井:私も他の人がうまくいったプロンプトをそのまま使ってみて、全然しっくりこなかった経験があります。同じ道具でも、持っているデータや使う文脈が違えば、結果は変わりますよね。
暉:そうなんです。AI活用の本丸は、データのルール整備と質を上げること。結局そこに戻ってくるんです。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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