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福本勲氏、Resilire、Skillnoteが問う──製造業は「AIエージェント」「サプライチェーン可視化」「スキルデータ経営」で変われるか?

三菱ケミカルが証明した「スキルデータ経営」の可能性

株式会社Skillnote 代表取締役 ⼭川隆史氏

 製造業の新卒採用比率は、2000年代の17%超から2023年には8.6%へと半減した。さらに、ものづくり白書によれば製造業の85%の事業所が「人材育成に問題を抱えている」と回答しており、これは過去最高の数字だ。この現実に向き合い続けているのが、スキルマネジメントシステム「Skillnote」を提供するSkillnote(スキルノート)の山川隆史代表取締役だ。

 山川氏は信越化学工業での半導体材料の海外営業経験を持ち、「製造業の競争力は人材で決まる」という確信から起業した。2016年の設立から10年が経つ現在、日経平均構成銘柄の製造業100数十社の1/3以上に採用されるまでに成長している。

 人材育成がうまくいかない根本的な理由として山川氏が指摘するのは、スキルを管理する仕組みの根本的な未整備だ。多くの企業でスキル管理は「スキルマップ」と呼ばれるExcelの表で運用されているが、部署ごとにバラバラに管理されているため更新漏れや記録ミスが起きやすく、「このスキルが近く失われるから先に伝承しよう」という計画的な育成が難しい。「新人が入社しても離職してしまい、また教え直しが必要になる。一方でベテランは現場業務でフル稼働していて教育に時間が割けない」という悪循環が、業界全体に蔓延している。

 Skillnoteの実証事例として山川氏が紹介したのが、三菱ケミカルの愛知県東海事業所・炭素繊維部門への導入だ。炭素繊維は航空宇宙から自動車まで幅広く活用される高機能素材で、世界市場では日本の3社が約半分のシェアを握る。成長産業でありながら、この製造現場も人材問題から無縁ではなかった。

 愛知県という自動車産業の中心地での採用競争の激化に加え、需要拡大に伴うベテランの離職が重なり、新人が育つまでに時間がかかる悪循環に陥っていた。炭素繊維の製造工程は高度に専門的で、全工程の習得に約3年を要する。その育成プロセスを管理する側にも深刻な問題があった。1人の管理者が100名分のスキルをExcelで管理するという状況で、「誰を次の育成対象にするか」を把握するだけで膨大な手間がかかっていた。

「見える化」「気づき」「目標の共有」が育成を変えた

図3 [画像クリックで拡大]

 Skillnoteの導入でスキルデータが一元管理されると、変化は3つの点で現れた。第1は視認性の向上だ。数百項目のスキルと所属メンバーが一覧表示され、育成計画の遅延状況も一目でわかるようになった。第2は即時検知の仕組みだ。育成計画の遅延発生時に管理者と指導担当者へアラートが自動通知され、「振り返ってみると遅れていた」という事後発見から早期介入が可能になった。第3は目標の共有だ。新入社員が自分の成長プロセスを主体的に確認できるロードマップが整備され、育成は管理者から一方的に施されるものから、本人も参加する共同プロジェクトへと変わった。

 成果は数字で明確に示された。A工程を習得するまでの日数が、導入前は200〜700日程度かかっていたのに対し、導入後は平均200日以下に短縮された。習得リードタイムが概ね半減したことになる。管理者からは「人の状況が手に取るようにわかり、次のフィードバックがしやすくなった」という声が、新入社員からは「自分の成長の道筋が見えてやる気が上がった」という声が得られた。

 3つの講演が共通して示すのは、「データを経営の意思決定の軸に置く」という一貫したメッセージだ。現場の暗黙知をAIに継承するフィジカルAI戦略、サプライチェーンを2次・3次まで可視化する予防型リスク管理、スキルデータで育成を計画的に進めるスキル型組織——いずれも、データの整備と活用なしには実現しない。「まず現場データを整備する」という一歩が、日本の製造業が次の競争フェーズを迎え撃つための最も確かな準備となることが示された。

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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