Pure Storageが社名から「ストレージ」を消した日──Everpureへの改名が映すAI時代のデータインフラ戦略
ピュア・ストレージ・ジャパン代表執行役員社長 五十嵐光喜氏インタビュー
オールフラッシュストレージの先駆者、Pure Storageが2026年2月23日、社名を「Everpure」に変更すると発表した。16年前にHDD全盛の市場を覆した企業が、なぜ今「ストレージ」の看板を下ろすのか。ピュア・ストレージ・ジャパン代表執行役員社長の五十嵐光喜氏に、社名変更の狙いとAI時代のデータインフラ戦略を聞いた。
ストレージの「イノベーター」として歩んだ16年
Pure Storageの歴史を振り返ると、今回の社名変更の重みがより鮮明になる。
2009年に米カリフォルニアで創業した同社は、当時「ディスクが当たり前」だったストレージ市場にオールフラッシュで参入した異端児だった。2015年にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場、2017年度に初の黒字化と年商10億ドルを突破。2025年度(FY25)の年間売上高は32億ドルに達し、サブスクリプションARR(年間経常収益)は17億ドルと前年比21%増で成長を続けている。グローバルで1万4,000社超の顧客を持ち、Gartner Magic Quadrantでは12年連続でリーダーに選出されてきた。
ピュア・ストレージ・ジャパン(現社名)代表執行役員社長の五十嵐光喜氏はこう語る。「当初、ストレージといえばディスクが当たり前でしたが、今やほぼフラッシュが標準になりました。その先駆者であると自負しています」
同社の技術基盤には独自の設計思想が貫かれている。一度導入すればデータ移行なしに無停止で最新化し続ける「Evergreenアーキテクチャ」、全製品共通のシングルOS「Purity」、そして汎用SSDを使わずNANDフラッシュを直接制御する「DirectFlash」テクノロジー。これらが「ストレージのライフサイクルを根本から変える」という同社の差別化要素を支えてきた。
日本市場でも設立から10年超が経過し、官公庁、通信、金融、製造と幅広い業種に導入が進んでいる。
AI時代がデータインフラに突きつける「二重の課題」
ここで視点を同社固有の話から、業界全体の課題へと広げたい。
企業のデータインフラには、AI以前から構造的な問題が横たわっていた。業務ごと・拠点ごとにストレージを調達してきた結果としてのデータのサイロ化。IT専門家が複雑な設定を一つひとつ手動で行う運用への依存。サイバー攻撃リスクの増大。そしてコストの上昇。これらは多くの企業IT部門が日常的に向き合ってきた課題だ。
五十嵐氏は「AIが登場したからといって、これらの課題がなくなったわけではない」と指摘する。むしろAIの登場は、既存の課題を解消するどころか、新たなハードルを積み上げた。
まず直面するのが、データの「AIレディ」化という課題だ。これまでデータにアクセスしていたのはアプリケーションや人間だったが、今後はAIエージェントが自律的にデータにアクセスする。アクセシビリティとガバナンスの両立が不可欠になる。そのデータが最新なのか古いのか、誰がどう生成したのかという来歴(リネージ)を追跡できなければ、AIは誤った結論を導きかねない。
さらに、拠点や業務単位で散在するデータを必要に応じて集約する「モビリティ」の確保も求められる。AIによる分析の精度は、どれだけ多様なデータを横断的に参照できるかに左右されるからだ。
五十嵐氏がとりわけ強調するのが、コンテキストの問題だ。「たとえば『100』という数値があっても、それが価格なのか数量なのか分からなければ意味をなさない」。データそのものに意味情報を紐付けること──これがAI活用の前提条件になりつつある。
既存の構造的問題が未解決のまま、AIが新たな要件を追加しているという、この「二重の課題」は、Pure Storageに限らず、ストレージ市場全体に構造変革を迫っている。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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