Pure Storageが社名から「ストレージ」を消した日──Everpureへの改名が映すAI時代のデータインフラ戦略
ピュア・ストレージ・ジャパン代表執行役員社長 五十嵐光喜氏インタビュー
なぜ「Pure Storage」を捨てるのか
戦略の転換を社名変更というかたちで表明する判断には、相応の覚悟が要る。Pure Storageというブランドは、Gartner Magic Quadrant 12年連続リーダー、NPS(Net Promoter Score)81を9年連続維持という実績に裏打ちされた、業界で最も認知度の高いストレージブランドの一つだ。
「Pure Storageという社名が強力なブランドであるがゆえに、ストレージ専業企業というイメージに固定されてしまう課題がありました」。五十嵐氏はこう切り出す。「当社はすでにストレージを超えたデータ管理のプラットフォーム企業へと進化している。IT担当者やビジネスリーダーにそれを伝えるタイミングが来たと判断しました」
新社名「Everpure」には、同社のアイデンティティが凝縮されている。「Ever」はEvergreenアーキテクチャの「常に進化し続ける」思想を継承し、「Pure」は顧客の成功に純粋にフォーカスするという創業以来の価値観を引き継ぐ。
3月5日からはニューヨーク証券取引所で新社名での取引が始まる。変わるものは、社名、ウェブサイト、ブランドカラー(従来の鮮やかなオレンジからモダンで落ち着いたトーンのオレンジへ)、そして製品名だ。従来の「FlashArray」「FlashBlade」といったストレージを想起させる製品名は、順次「Everpure」ブランドへ統一される。
一方、変わらないものも明確にされている。企業の価値観とミッション、戦略、リーダーシップ体制、ティッカーシンボル(PSTG)、そしてSKU(製品型番)・価格体系。パートナー企業からの評価も良好で、NTTドコモの引馬章裕執行役員は「個々のデータ移行不要の運営、ダウンタイムの最小化、消費電力の削減」といったEDC(エンタープライズ・データ・クラウド)ビジョンへの期待を表明。
この「賭け」は成功するか――ストレージ市場の行方
冷静に見れば、この社名変更にはリスクもある。
ストレージ市場そのものが「データ管理市場」に溶け込んでいく兆しは確かにある。Gartnerの業界分類でも、従来のストレージカテゴリとは異なる新しいジャンルの登場が議論され始めている。データセンターの電力問題も追い風だ。AI時代のGPU需要急増により電力は逼迫しており、ストレージの省電力化を強みとするEverpureにとっては好材料となる。
一方で、データ管理領域にはOracle、Snowflake、Databricksをはじめとする強力なプレイヤーがひしめく。ストレージ市場においても、Dell Technologies(シェア世界1位、約22.7%)やNetApp、HPEといった競合は健在だ。「分析エンジンは持たず、AIレディなデータ基盤に特化する」という棲み分け戦略が市場に受け入れられるかどうかは、まだ実証されていない。
もっとも、16年前には存在しなかった企業がストレージ市場をディスラプトした実績がこの会社にはある。五十嵐氏もその点に自信をのぞかせる。「この16年で現在のプレゼンスを築いてきたのはイノベーションへの強い意志があったからです。次の5年・10年においても、全く新しい方向性へと進化していけると確信しています」
この記事は参考になりましたか?
- EnterpriseZine Press連載記事一覧
-
- Pure Storageが社名から「ストレージ」を消した日──Everpureへの改名が映...
- 2030年「情報システム終焉」に備えよ──NTTデータの「AIショアリング×オントロジーA...
- 福本勲氏、Resilire、Skillnoteが問う──製造業は「AIエージェント」「サプ...
- この記事の著者
-
京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
