スケールアウトに欠かせない「可観測性」「オーケストレーション」
3つ目の可観測性は、AIエージェントがコンテキストを踏まえた回答ができるか、正しく動作しているのかを把握するために必要な要素である。稼働中のAIエージェントに何か問題がある場合は改善し、最適な状態を維持したい。さまざまなツールを利用し、AIエージェントを迅速に構築することは可能になったが、作りっぱなしでは許されないからだ。構築後の運用をどうすべきか、仕組みを含めて整備することがビジネスユースケースでは求められる。また、人間同様にビジネスパフォーマンスも問われるだろう。これらの成果を得るためには、ポリシーを変更する必要があれば、AIエージェントがアクセスするコンテンツを増やす必要もあるかもしれない。この継続的な改善のためには、可観測性が重要になる。
ラテンアメリカを拠点とするリテーラーのファラベラ(Falabella)は、約4000万人の顧客を抱える企業だ。同社はAgentforceを導入し、WhatsAppで顧客からの質問に答えるAIエージェントを構築した。このAIエージェントにカスタマーサポートを任せる上で、顧客が満足しているか、エージェントのパフォーマンスは十分か、人間のオペレーターへのエスカレーションを適切に行っているかなどを運用しながら把握したいと考えた。これらは、AIエージェントのパフォーマンスを改善するための切り口となるためだ。同社のような可観測性を確保する取り組みは、特にパイロットプロジェクトから大規模展開への移行において、壁にぶつかっている企業の参考となる。
そして、4つ目のギャップはオーケストレーションだ。AIエージェントがタスクを実行するとき、データだけでなく機能もコールされる。また、他のAIエージェントを呼び出し、場合によっては人間にも関与してもらうが、初期段階は“人間とエージェントの連携”からスタートすることが多いだろう。たとえば、資産運用会社のRBCでは、資産運用マネージャーが顧客の投資ポートフォリオについて、より良い提案ができるよう支援するAIエージェントを構築した。このAIエージェントから成果を得るためには、人間とAIエージェントの連携がシームレスでなければならない。このオーケストレーションを実現できれば、AIエージェント同士が連携する「マルチエージェント」へとプロジェクトスコープを拡大できる。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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