パイロットから大規模展開へ、ラストマイルを越えた先には
タタイ氏は、Agentforceのユースケースの傾向は、従業員向けと顧客向けの2つに分かれるとする。特にRBCのような金融サービス業は厳しい規制下にあるため、従業員向けのユースケースをパイロットプロジェクトとして選ぶ傾向があるという。一方、ウィリアムズ・ソノマやファラベラなど、小売業はカスタマーサポート向けのAIエージェントを構築している。
また、成熟度の視点では、シンプルなユースケースから始めるケースが多いという。営業における顧客理解のためのレポート作成、カスタマーサポートでのケースの優先度評価などだ。次の段階では、(質問への回答を通して)顧客への適切な情報提供、ワークフローの実行と展開していく。ハイブリッド推論を活用したアデコの求職者選考は、ワークフローの実行に該当する。人間同士のやり取りと似ていて、最初のきっかけは質問でも、次のステップではワークフローの実行に移っていく。こうした段階をスムーズに踏んでいくことで、AIエージェントは真価を発揮する。その先には、パーソナライズしたマーケティングキャンペーンを広範囲に展開するような、AIエージェントがプロアクティブに提案してくれるようなユースケースも考えられるだろう。
「コンテキスト」「コントロール」「可観測性」「オーケストレーション」という、4つの障壁を乗り越えた後には、組織へのマルチエージェントの展開が待つ。適切なAIエージェントをどのように選ぶか、それぞれをどのように連携させるか、パフォーマンスをどのように改善するか──人間社会と同様に、AIエージェントがあらゆるプロセスに関与するようになったとしても、まずは対話から信頼関係を発展させていく点では変わらない。今後はマルチエージェントを前提に、すべてのAIエージェントが機能するよう継続的な改善を考えていくことになる。その際、セールスフォースのAIエージェントだけで処理が完結するとは限らない。「他社のAIエージェントとの連携を含めた最適な実装に、業界全体で重点的に取り組むことになる」と、タタイ氏は展望を語った。
ビジネス向けユースケースにおけるAIエージェント構築プロジェクトがパイロットプロジェクトに留まるのは、テクノロジーの問題ではない。AIエージェントの導入を目的化せず、常にビジネス成果への注力を忘れてはならないのだ。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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