生成AIを超える「創造AI」の時代へ──日立製作所 矢野和男氏が語る、CFOの力を拡張する第4世代AIの本質
「BlackLine Summit 2026」レポート
AIが「人の力を増幅する」時代のCFOの役割──意思決定の質をどう変えるか
矢野氏が繰り返し強調したのが、AIを「人の仕事を置き換えるもの」として捉えることへの疑問だ。スマートフォンが日常に溶け込んだように、AIも人間と深く一体化していく。「AIか人間か」という対立構図ではなく、「AIで増幅した人間か、そうでない人間か」という問い方こそが正確だというのが矢野氏の立場だ。
CFOの役割に引き寄せると、この視点は具体的な変化を示唆する。コスト削減や効率化の推進にとどまる旧来の役割は、相対化されていく。財務データと現場データをAIで結び付け、見えなかった付加価値を発掘し、経営意思決定のストーリーに落とし込む力──そこにAI時代のCFOの価値が移っていくとみられる。矢野氏自身、ハピネスプラネットの月次業績報告をFIRAに分析させたところ、社内のCFOを超える洞察が返ってきたと打ち明けた。
職位が上がるほど、本音で議論できる相手は少なくなる。忖度や立場の論理が絡む会議では、尖った問いや批判的な視点はなかなか出てこない。日立の徳永社長もFIRAを活用しているというエピソードは、その文脈で語られた。「社内外の立場に縛られず、短期と中長期を俯瞰し、人が言いにくいことをズバリ言う。そういう存在が意思決定の質を変えるんです」と矢野氏は言う。
最後に矢野氏が残したメッセージはシンプルだった。創造AIは人を不要にするものではなく、人の創造性を物理的なレベルで増幅する道具だ。「正しいかわからないけど、腹を決めてやってみようか」という判断は、最終的に人間がする。AIはその手前の問いを広げ、見落としを補い、思考の速度と質を高める。経営・企画・変革・イノベーションといった正解のない領域を、外部コンサルへの依存なしに自社でまわせる時代がすでに始まっている。CFOをはじめとする経営層にとって、創造AIは「いずれ検討する話」から「今すぐ向き合うべき実践課題」へと変わりつつある。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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