日本IBM出身の入澤由典氏がキンドリルジャパンを舵取る──過去最高益から“さらなる成長”に向けて意欲
自席の前には長蛇の列ができるフランクなスタイル、ボトムアップで組織風土を変える
2021年にIBMからのスピンオフして以来、独立したITインフラサービス企業として確固たる地位を築いてきたキンドリル。日本法人であるキンドリルジャパンは、2025年度に過去最高の業績を達成し国内でも存在感を強める中、2026年4月、新たなリーダーとして入澤由典氏を代表取締役社長に迎えた。日本IBMで30年以上のキャリアを積み、デル・テクノロジーズでの要職を経てキンドリルに合流した入澤氏は、同社をいかに牽引していくのか。日本企業が直面するIT人材不足やサイバーリスク、そして過熱するAI投資という荒波の中で、ミッションクリティカルなシステムを支え続けてきた同社だからこそ提示できる真のDXの姿を、新社長に聞いた。
「お帰りなさい」と迎えられた“古巣”をさらなる成長に導く
キンドリルは、もともとIBMの「マネージド・インフラストラクチャー・サービス」を中核とするグローバルテクノロジーサービス部門、つまりメインフレームや基幹系を含むITインフラ運用・アウトソーシングの部隊をスピンオフし独立した会社だ。レガシーからクラウドまでをまたぐエンタープライズIT基盤を、ベンダーロックインに偏らず中立な立場で設計・運用し、ミッションクリティカル領域で培った運用ノウハウと人材の専門性でモダナイゼーションを伴走できる点に強みをもつ。
2026年4月に新たに同社の社長に就任した入澤氏は、新卒で日本IBMに入社。約30年にわたり営業やアウトソーシング、グローバルテクノロジーサービスの責任者を歴任した。その後、デル・テクノロジーズでパートナービジネスを牽引し、2025年4月に副社長としてキンドリルジャパンに入社した。古巣である日本IBMの流れを汲む組織への帰還となり、「4月に着任した際には、多くのメンバーから『おめでとう』ではなく『お帰りなさい』と迎えられました」と入澤氏は振り返る。
しかし、戻ってきた場所はかつての日本IBMという巨大企業の一部門ではない。キンドリルジャパンは既に、独立した一企業としての自律的な運営基盤を確立している。前任のジョナサン・イングラム氏らが率いた期間は、まさに「自立」のための期間だった。巨大組織から切り離された営業体制の再構築、必要なスキルの定義、そして一つの会社としてのガバナンスの確立に、同社は注力してきたのだ。
入澤氏は、前体制が築き上げたこの強固な土台を継承しつつ、4月からの新体制では「さらなる成長と変革」に舵を切る。かつては組織の一部として受け身で動いていた部分もあったが、これからは自律的なスタートアップのようなスピード感で動くことが求められる。入澤氏は「ビジネスのベーシックは変わらなくても、一つの会社を運営するという観点では、過去の延長線上にはない大きな進化が必要です」と決意を語る。
IBMとのパートナー関係を維持しつつ、国内市場で存在感を出す
IBMからのスピンオフによって得た最大の変化は、自由なパートナーシップの選択権だ。現在、キンドリルはIBMとは重要なパートナーとして関係を維持しつつ、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudといったハイパースケーラーとの連携を拡大させている。
それに加え、国内市場におけるパートナー戦略も推進している。直近ではSCSKと共同で、国産メインフレームをコンバージョンするためのツール開発を発表した。
「日本企業が長年悩んできたレガシー資産の継承という課題に対し、日本発のソリューションで応える。これは日本市場で最も多くのメインフレームを支えてきた我々にしかできない取り組みです」(入澤氏)
ハイパースケーラーとのクラウド連携を深める一方で、オンプレミスの重要性も軽視していない。オブザーバビリティなどの最新技術を取り入れながら、顧客の環境がどこにあろうとも一貫した事業継続を担保する。
入澤氏は「何でもできます、と言うのではなく、『この領域ならキンドリルに聞くのが一番だ』と言われる得意分野を3つ、4つと積み上げていきます」と付け加える。キンドリルだから一緒にやりたい、このパートナーと協業すればよりキンドリルの強さを発揮できる。パートナーの数を増やすのではなく、パートナー戦略の質的向上を目指している。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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