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週刊DBオンライン 谷川耕一

データベースの主役はAIエージェントに “未知の負荷”をどう捌くか?「TiDB X」から探る

メタ買収で話題の「Manus」が採用 長期記憶を支えるためのロジックとは

S3を中核に据えた「Shared Everything」への転換 計算とストレージの完全分離がもたらす俊敏性

 TiDB Xのアーキテクチャにおける最大のブレイクスルーは、従来の分散データベースで主流であった「Shared Nothing(シェアードナッシング)」構成から、Amazon S3を主要なデータストアとして活用する「Shared Everything(シェアードエブリシング)」に似た構造への転換だ。従来のTiDBでは、複数のノードがそれぞれデータを分割してローカルに保持するアーキテクチャを採用していた。一方のTiDB Xでは、すべての永続化データを共有ドライブのAmazon S3に集約させる。

提供:PingCAP株式会社
提供:PingCAP株式会社
[画像クリックで拡大]

 分散データベースとしての「堅牢なトランザクション処理の仕組み」は維持しつつ、各計算ノードは頻繁にアクセスがあるホットデータを保持するためのキャッシュ層として機能させ、確定したデータを背後で定期的にAmazon S3へとフラッシュ(Flush)する。関口氏は「データベースとしての応答性を犠牲にすることなく、コンピュートとストレージの完全分離を実現している」と説明する。

提供:PingCAP株式会社
資料をもとに編集部が作図(資料提供:PingCAP株式会社)
[画像クリックで拡大]

 新たなアーキテクチャと並ぶ、もう一つの重要な進化がコンポーネントの徹底した「マイクロサービス化」だ。従来のアーキテクチャではノード単位でのスケールアウトしか選択肢がなく、ワークロードの種類に応じた細やかなリソース配分は困難だった。TiDB Xでは、クエリのパースや実行計画の作成といった相対的に軽い処理と、インデックス作成やデータ分析などの重たい処理をそれぞれ独立したマイクロサービスとして分離している。

 そのため、AIエージェントが新たなインデックスを作成するDDL(データ定義言語)を突発的に発行した場合も、バックグラウンドのワーカープールから処理専用のコンピュートリソースを動的に割り当て、高速な並列処理を実行し、処理が完了次第リソースを解放可能だ。

 また、これによりトランザクション処理のパフォーマンスを劣化させることなく、未知のクエリや重たい処理を捌ききれる。同時に数百万規模のAIエージェントが生成する、論理クラスタの膨大なメタデータを効率的に管理できるようになり、俊敏なオートスケールも実現する。

次のページ
AIスタートアップ「Manus」がTiDB Xを選んだ理由

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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