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なぜキャデラックF1はコーヒーマシンより先にERPを購入したのか IFSで構築したデジタル戦略

世界を転戦し、数千点のパーツを管理

 2026年、高い参入障壁を乗り越えて「F1(Formula One)」に11番目のチームとして参入したキャデラック(Cadillac)。彼らが最優先したのは、強固なIT基盤の構築だった。厳格なレギュレーションによる制限下、いかにITを駆使して土台を固めているのか。鈴鹿サーキットで開催された「F1日本グランプリ」で真髄に迫る。

10年ぶり「11番目のチーム」誕生 キャデラックが重視するIT戦略

 2026年3月、桜が舞いはじめた鈴鹿サーキット。パドックでひときわ注目を浴びていたのは、10年ぶりの新規参入チームとしてグリッドに並んだキャデラックだ。F1の世界は、2016年のハース(HaaS)参入以来となるチームの誕生に新たな局面を迎えている。まさに変革の先鋒ともいえるキャデラックを支えるのは、自動車メーカーの巨人であるゼネラルモーターズ(GM)だ。2023年の参入申請から始動したプロジェクトは、将来的にはGMが自社製パワーユニットを供給することで、ようやくFIAからの最終承認を勝ち取った。

 パドックの喧騒の中、「キャデラックは、ゼロからまったく新しいF1チームを立ち上げており、“F1が求める”スピードでスケールできるオペレーション基盤を必要としていました。私たちの役割はチームの成長にともない、より高度かつ迅速な意思決定を実現できるシステムを提供することでした」と語るのは、IFSのエイミー・ヘザリントン氏。同社は、キャデラックF1チームと戦略的パートナーシップを締結しており、正式参入が決定する以前から同社のソフトウェアが基幹システムとして利用されている。

IFS シニアスポンサーシップマネージャー エイミー・ヘザリントン(Amy Hetherington)氏
IFS シニアスポンサーシップマネージャー エイミー・ヘザリントン(Amy Hetherington)氏

 キャデラックF1チームの立ち上げ当初、まだ少人数の段階でチーム代表のグレアム・ロードン(Graeme Lowdon)氏は、コーヒーマシンを購入するよりも先に「IFSのシステムを導入する」という決断を下した。レガシーシステムを一切持たない、デジタルネイティブなF1チームとして競争する意思の表れといえるだろう。

 キャデラックが参戦した2026年は、レギュレーションの大幅な刷新が行われている。すべてのチームが念頭に置くのは、「予算制限(コストキャップ)」の存在だ。現代のF1では、1ドルの支出も無駄にできず、すべてのコストを厳格に追跡しなければならない。予算制限を超えると巨額の罰金につながるだけでなく、新しいパーツのリリースにも支障をきたすからだ。

キャデラックF1チームとIFSは、2026年1月に戦略的パートナーシップ締結を発表している。リアウイング側面とサイドミラーにIFSロゴマーク(写真)
キャデラックF1チームとIFSは、2026年1月に戦略的パートナーシップ締結を発表している。リアウイング側面とサイドミラーにIFSロゴマーク(写真)

 また、複雑なシステムを搭載する新世代マシンの運用において、シミュレーションと実走行データの乖離を埋めることもITの役割だ。事実、IFSを導入したキャデラックは参入初年度から驚異的な完走率を維持している。「新たにF1チームをゼロから立ち上げる、その最大の課題の一つは、チームがトラック上での信頼性とパフォーマンスに完全に集中するための、適切なオペレーション基盤を整えることです。IFSの役割は、複雑な環境下であっても適切に管理でき、迅速かつ的確な意思決定を下すためのシステムを提供することにあります」 とヘザリントン氏。初日からITによるデータドリブンな管理を徹底し、マシンの信頼性をデジタルで担保してきた成果といえるだろう 。

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パドックから見えてきたIFSの価値 1台あたり8千点のパーツ管理にも寄与

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この記事の著者

岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)

1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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