「SREは開発者」パナソニックコネクトは仮想組織によるハイブリッドSRE 製造業にフィットする運用へ
「PagerDuty on Tour Tokyo 2026」レポート
「SREは開発者」を明確化 24時間連続運用への挑戦も
先述した3つの特徴を踏まえつつ、野原氏はSRE組織の状況を詳しく解説した。まず、パナソニックコネクトの場合、「SRE部」「SRE課」のようなSREが名前に含まれる部署は存在しておらず、仮想的な組織として運営している。開発チームはプロダクトの数だけ設けられており、それぞれのチームから必ず1名の「SREの帽子をかぶった人」を任命しているという。そのメンバーと運用チームで仮想的なSREチームを形成している。野原氏は、開発者が運用チームに入ることで、「『SREは開発者』という意図を明確にする効果もある」とした。
実際、開発チームと運用チームによる週1回の定例ミーティングでは、開発者が基盤の動作を確認したり、運用チームが開発スケジュールを把握したりと、うまく機能しているという。「ガートナーが提唱するSREモデルにおける『ハイブリッドSRE』に該当するもので、製造業のような組織には特にフィットするモデルだと考えている」と野原氏。また、AIによるトイル(なくすべき作業)の削減にも力を入れており、アトラシアンのConfluenceやJiraを活用しながら管理業務の自動化を進めている。まだ完全には実現できていないとしながらも、継続的な自動化によって管理業務を確実に削減できているという。
次に野原氏は、海外拠点のメンバーがどのような形で運用体制に参画しているのかを紹介した。先述した通り、開発チームは多国籍のメンバーから構成されている。ベトナムのメンバーであれば、ベトナム拠点から運用を担う形だ。そうした体制を活かす「Follow the Sun(地球一周)」の考え方で、24時間連続運用を実現しようとサポート時間の延長に取り組みはじめている。特に重要となるのが「引き継ぎの仕組み」だ。たとえば、日本で対応した内容をベトナムにいる担当者へとスムーズに引き継がなければならないが、そのためのプロセスをどのように整備すべきか。この成否が米国などを加えた、24時間連続での運用体制の実現を握っている。
さらに、新しいQMSについては、可能な限り簡素化する方針で整備した。基本的な考え方は、現場に判断を委ねると割り切ることだ。プロダクトマネージャーが承認すれば実行し、問題があればロールバックするか、あるいは次のスプリントで修正することとした。ただし、この方針が現場の負担増につながることは野原氏も承知している。そこでQMSの簡素化だけでなく、ツールを活用したテストの自動化、シフトダウン(プラットフォーム側に処理を委ねることで、現場の開発負荷を軽減すること)もあわせて実施している。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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