今回は「計画プロセスのポイント―1」として、「要求事項の把握」「スコープ定義と要素成果物の洗い出し」「スケジュールの作成」について解説します。
[1]要求事項を把握する
このプロセスも、PMBOK第4版で新しく追加されました。初版から第3版までのPMBOKに、なぜ、このプロセスがなかったのか。要求事項が明確にならなければ、プロジェクトは始まりません。このプロセスでは、ファシリテーション型ワークショップ等の手法を使い、ステークホルダの要求事項を分析、把握し、それを要求事項文書に、次のような項目で整理します。
 ・ビジネスニーズや捉えるべき好機。(現状の制約/プロジェクト立上げ理由) 
 ・追跡可能なビジネス目標およびプロジェクト目標 
 ・機能要件(ビジネスプロセス、情報、成果物との相互作用を適切に記述) 
 ・非機能要件(サービスレベル、性能、安全、セキュリティ、法令遵守、保存、廃棄など) 
 ・品質要件 
 ・受入れ基準 
 ・組織の指針となる原則を表明したビジネス規則 
  
等など。
[2]スコープを定義して要素成果物を洗い出す(WBS作成)
要求事項が明確になれば、実施すべき作業範囲を把握することができます。把握した内容を文書化したものが、プロジェクト・スコープ記述書になります。この記述書には、プロジェクト憲章と重複する内容が含まれていましたが、PMBOK第4版で、はっきりと整理され、その違いが明確になりました。プロジェクトスコープ記述書には、次の項目が含まれます。
 ・成果物スコープ記述書    
 ・成果物受入れ基準
 ・プロジェクトの要素成果物 
 ・プロジェクトからの除外事項  
 ・プロジェクトの制約条件 
 ・プロジェクトの前提条件
●スコープには、次の2類があります。
 成果物スコープ:プロダクト、サービス、所産に特有の特性や機能
 プロジェクトスコープ:プロダクト、サービス、所産を生み出すために実行すべき作業
作業範囲(スコープ)が定義されると、次にその作業範囲内の作業をツリー構造体に細かく分解し、そこに含まれる要素成果物を洗い出します。これを、ワーク・ブレークダウン・ストラクチャー(WBS:Work Breakdown Structure)といいます。WBSの不備は、プロジェクトの成否に大きな影響を及ぼすため、プロジェクトの核といわれています。
各WBSは、それぞれ独自の識別子(WBSコード)を持ち、最下層の一番小さなWBSは、ワークパッケージと呼ばれます。そして、各WBSの詳細な内容が、WBS辞書に記述されます。
プロジェクトスコープ記述書とWBS、そしてWBS辞書の3つでスコープベースラインが構築されます。

(次ページへ続く)
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青栁 次男(PMP)(アオヤギ ツギオ)
株式会社タリアセンコンサルティング 代表取締役
1966年早稲田大学第一商学部卒業。1967年日本航空入社。システム開発部門にて、旅客予約管理システムをはじめ、整備、運航、一般管理等、システム開発に従事。また、国内初の海外オンラインリアルタイムシステム開発を担当。
1998年タリアセン設立に参画...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
 
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