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クラウド時代のIT戦略とミドルウェア(AD)

IT部門がミドルウェアのことを考える時代は終わった

日本IBM WebSphere事業部第一クライアント・テクニカル・プロフェッショナルズ 部長 小島賢二氏

システムのパターン化とデプロイメントの自動化による環境構築

――ところで「標準化」と「自動化」とは、一体何を意味するものなのでしょうか?

 標準化とは、企業や組織の中で利用するシステム環境をパターン化し、システム・トポロジー、使用するミドルウェアのバージョン、パッチレベル、構成パラメーターなどを事前に取り決めておいた上で、そのパターンを再利用していくという考え方です。システム環境を構築する際に、いちいち初めから作り直すのではなく、あらかじめ用意されている標準パターンを再利用できれば、情報システム部門の日々の業務負荷を大きく減らせるはずです。

 また、標準化されたパターンができていれば、自動化の仕組みの上にも載せやすくなるので運用管理を効率化でき、かつ手動による作業のミスも防止できます。IBM Workload Deployerはこのように、標準化されたパターンを活用し、それに対して自動化の枠組みをはめていくことで、人的エラーのない、繰り返し作業に強いシステム構築を実現する製品なのです。

図2:仮想化されたリソースプールを管理するためIBM Workload Deployer
図2:仮想化されたリソースプールを管理するためIBM Workload Deployer

 

――標準化されたパターンとは、具体的にはIaaSにおける仮想マシンの導入イメージのことを指すのでしょうか?

 仮想イメージは、パターン化される要素のひとつにすぎません。IaaSでは、仮想マシンに割り当てるCPU、メモリー、ディスク、ネットワークといったシステムリソースやOSとして使用される仮想イメージを標準化しますが、その上に載るミドルウェアまでは考慮しません。

 よって、仮想マシンの配置後に、ミドルウェアのインストールとセットアップ、パッチ適用などをすべて手動で行う必要があります。IBMでは、あらかじめOSと自社のミドルウェア製品を組み合わせたOVF形式の製品を「ハイパーバイザー・エディション」として提供しており、これを使用すればミドルウェア環境がセットアップされた仮想マシンを簡単に作成することができます。

 

図3:アプリケーションを稼働させるために必要な環境をパッケージングした仮想イメージ
図3:アプリケーションを稼働させるために必要な環境をパッケージングした仮想イメージ

 

――IBM Workload Deployerは、どのような形でPaaSを実現するのでしょうか?

 IBM Workload Deployerが実現するPaaSは、OSだけでなくミドルウェアまで標準化できるので、IaaSに比べればより標準化の度合いが上がります。一方、アプリケーションの視点ではJava EEという広い自由度が確保されますから、SaaSと比較した場合、より多様なニーズにフィットするアプリケーションを柔軟に開発できます。ですから、企業システムにおいては、こうしたPaaSのニーズは高いと考えています。

 IBM Workload Deployerも持つ機能としては、「トポロジー・パターン」で実現されます。クラウドとして必要とする仮想マシンの数、そこで使用する仮想イメージのバージョンやパッチレベル、システムコンポーネントとしての役割(Webサーバー、アプリケーション・サーバー、DBサーバーなど)やそれらの依存関係、高可用性の為のクラスター構成の有無といったシステム構成に必要な要素をトポロジー・パターンとして定義します。そして、環境が必要になったら、そのパターンを呼び出して実行すれば良いわけです。

 定義したトポロジー・パターンの大きさに依存しますが、仮想マシンの作成、OSやミドルウェアの導入と構成を含め、アプリケーションが稼働できる状態にするのに、数十分というレベルの時間感覚で実現できるようになります。また、こうしたトポロジー・パターンを定義する作業は、ブラウザーでIBM Workload Deployerにアクセスし、GUI上でドラッグ&ドロップの操作を行うだけで簡単に行うことができます。

 

図4:トポロジー・パターンの定義
図4:トポロジー・パターンの定義

 

――そのように、複数の仮想マシンを組み合わせたシステム環境を自動的に配置できるようになることで、ユーザーには具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?

 一番分かりやすい例は、開発業務でしょう。通常のアプリケーション開発プロジェクトでは開発環境、テスト環境、本番環境、検証環境と、多くの環境を使い分けますが、必要になる度に初めからこれらを構築していては、手間が掛かりすぎますし、人的ミスが発生する可能性もあります。かといってこれらの環境を、使わない間もずっと保持しておくのも、システムリソースの無駄使いになります。一般的にデータセンターにおけるサーバーの平均85%がアイドル状態であると言われているのは、このようなサーバーのCPU使用率が関係しているのでしょう。

 このようなケースにおいて、IBM Workload Deployerのような仕組みで、今まさに使いたいシステム環境のトポロジー・パターンを即座に呼び出して自動的に配置できるメリットは、非常に大きいといえます。また、トポロジー・パターン情報のみをIBM Workload Deployer内に残し、システムリソースを解放して停止するモードを提供しているので、古いテスト環境を一年後に復活させるといったことも簡単に実現できるのです。クラウドでは、システムはリムーバルなリソースであり、取り付けが自由自在なのです。

関連情報
IMPACT 2011

今回のインタビューに対応いただいた小島氏は、2011年7月14日(木)に東京都内で開催されるWebSphereブランドの年次カンファレンス「IMPACT 2011」でも、「プライベート・クラウドにPaaSを実装する意義と方法」と題した講演を予定しています。詳しくは公式サイトをご覧下さい。

WebSphere Application Server V8.0 アナウンスメント・ワークショップ
また、8月4日(木)と5日(金)の2日間、WAS V8.0の新機能を紹介する技術者向けワークショップの開催を予定しています。1日目は、新機能の概要とWASインフラ構成を、2日目は、Java EE 6仕様の更新部分や、WAS V8.0のアプリケーション関連の新機能など、アプリケーション開発に関する内容を紹介する予定です。

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アプリケーションのタイプでパターン化

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この記事の著者

吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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