ハイパーコンバージドインフラでIT運用プロセスが変わる
ITインフラのライフサイクル管理で煩雑さの原因になるのは複数のベンダー製品を組み合わせることにある。OS、サーバー、スイッチ、ストレージなど、レイヤーごとに異なるベンダー製品を用いると製品ライフサイクルもサポートポリシーも異なる。監視や管理のポイントも多岐にわたる。一部を差し替えれば全体の接続性や整合性も再確認しなくてはならない。あるIT運用管理者は苦笑いしながらこうぼやく。「安心してフル稼働していた時期はいったいどれほどだったのか」
EMCジャパン株式会社 アドバイザリー システムズエンジニア 平原一雄 氏は「楽になる方法はあります。それがハイパーコンバージドインフラという選択です」と明言する。
あらためてハイパーコンバージドインフラとは何か。一般的にはIPネットワーク(LAN)、サーバー、ストレージネットワーク、ストレージはそれぞれ別の機器が担うところ、ハイパーコンバージドインフラならこれらの要素が統合されている。しかも高密度。ストレージ部分はソフトウェアで提供されている。
また一般的にはコモディティハードウェアを活用しており、見た目は1台のサーバーでも、筐体内部は複数のサーバーが収納されている。平原氏は「コモディティハードウェアということで心配なさる方もいますが、安価だから信用ならないのではありません。標準的で広く普及しているから(規模の経済で)調達コストが削減できているということです」と補足した。特定のハードウェア機能に依存せず、すべての機能はソフトウェアで実装されている。加えてハイパーバイザーはインストール済み、統合管理ツールも標準装備されているものが多い。
一例にDell EMC VxRailハイパーコンバージドインフラがある。1台にプロセッサ、RAM、冗長電源と冷却装置、ネットワーク接続、GPU、オールフラッシュまたはハイブリッドディスクパックなどが統合されている。平原氏は「あらゆる機能が1台で提供可能な自己完結型インフラストラクチャとなっています」と話す。平原氏はメリットを4つ挙げた。
メリット1:インフラ導入が圧倒的に楽になる
これまで複数のベンダー機器を組み合わせていたため、製品選定から調達や構築で作業が長期化していたが、ハイパーコンバージドインフラならすでに統合された状態で販売されているため構成要素を選定する必要がなく、短期調達ができて、初期設定もシンプルな作業で終了する。従来と比較して買ったらすぐ使えるというわけだ。
VxRailなら高密度化も大きな特徴となる。1000デスクトップユーザーのVDIインフラが10Uに収まってしまう。ざっとCPUは8ソケット、64コア、メモリは1024GB、ストレージは24TBだ。「発注から納品まで最短で2週間です」と平原氏は言う。
メリット2:買い方が楽になる
あらゆる構成要素が統合されているため、購入する側が主に選ぶのは購入時の規模となる。スモールスタートできて、ノードを追加して性能と容量を拡張するスケールアウトも可能だし、ストレージを必要に応じて追加するスケールアップも可能だ。平原氏は「必要なノード数からスタートし、段階的に拡張可能です。さらに目的に応じたノード選択が可能です」と話す。初期費用が抑えられるのも特徴だ。従来のSANであれば、拡張を見越して設置面積、電力や空調を考慮する必要があるが、VxRailなら統合されており高密度化しているため必要最小限ですむ。
メリット3:インフラの保守が楽になる
例えばサーバーのソフトウェアアップグレードでマニュアル操作を台数分繰り返すような場合だと、工数が多くオペミスもあった。しかしVxRailならアップグレードはワンクリックですみ、無停止で完了する。システム更改もVMを停止することなくオンラインで移行可能となる。
メリット4:ベンダーサポートの窓口がひとつ
システムが統合されているということは、サポート窓口も1つですむ。これまで問題が起きると、どこに問題切り分けや解決までに時間を要していた。しかしVxRailならサポート窓口は1つなので切り分けの必要がない。
平原氏は「ハイパーコンバージドインフラ導入によりIT運用プロセス改善が行えます」と話す。それにより、インフラ簡素化により定常業務の負担削減、フットプリント削減と購買最適化で提供コスト削減、早期サービス立ち上げでビジネスに貢献、ベンダーに依存しない円滑な移行実施といった効果が期待できる。
運用保守の効率化でIT担当者は価値を高めていくことができる
ハイパーコンバージドインフラとソフトウェア定義が組み合わさると、IT運用管理はさらに次のステージへと進む。例えばVxRailなら、バックアップ、災害対策、クラウド活用、マーケットプレイスなど必要な機能は多くがソフトウェアベースで提供されている。
バックアップを考えたとき、ハイパーコンバージドインフラのように集約型だと、災害を想定して別の拠点にバックアップをしておく必要がある。その場合、データ量を最小限にするために重複排除が有効になる。重複排除であれば、Dell EMC Data Domainが高い効率で実施できる。チェックサムの比較、データ障害検出、自動修復機能でコスト対効果の高いバックアップが実現できる。
組み合わせ次第ではデータ管理はサービス化へと進展する。ハイパーコンバージドインフラ(VxRail)にvSphere Data ProtectionとData Domainを組み合わせることで、BaaS(Backup as a Service)となる。またハイパーコンバージドインフラ(VxRail)にDell EMC RecoverPoint for Virtual Machinesを用いることで、DRaaS(DR as a Service)となる。
さらにハイパーコンバージドインフラ(VxRail)にCloud Arrayを組み合わせるとSTaaSだ。Cloud Arrayはパブリッククラウドストレージをアーカイブやバックアップとして利用できる。これはクラウド間データ移行やクラウドストレージ連携にも有効だ。平原氏は「パブリッククラウドのコストメリットと企業ITとしてのガバナンスを両立できます」と話す。
ハイパーコンバージドインフラやソフトウェア定義製品が組み合わさると、さらなる運用効率化が期待できる。最後に平原氏は次のように述べ、セッションを締めくくった。
「運用保守効率化が進めば、IT担当が運用保守以外に時間を割くことができるようになります。例えばビジネスに貢献する提案などです。そうした分野にITスキルを生かしていければ、IT担当者は自身の価値を高めていくことにもつながります」