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Db2メッタ斬り!(AD)

Db2の新たな方向性にデータベース技術者が思うこと

 企業の基幹系システムを担うリレーショナルデータベース製品として、多くの大規模システムやミッションクリティカルシステムで使われてきた「IBM Db2」。発売元であるIBMでは近年、基幹系システムだけに留まらず、情報系システムでの利用を拡大させるDb2の製品戦略を次々と打ち出している。事実、DWH(データウェアハウス)用途を前提とした「Db2 Warehouse」、クラウドサービスとして利用する「Db2 on Cloud」、クラウドDWHサービスの「Db2 Warehouse on Cloud(WoC)」など、これまでのDb2のイメージを覆す製品や技術を次々と打ち出している。そんなDb2の新たな方向性を、システム開発・運用現場の最前線で活躍するデータベース技術者たちは一体どんな目で見ているのだろうか? さまざまな立場からDb2とかかわってきたエンジニア4名に集まっていただき、「Db2メッタ斬り!」と題した座談会で本音を語り合ってもらった。今回はその前編として、情報系データベースについて活発な意見交換が行われた模様をお届けする。

座談会参加者

  •  アップタイム・テクノロジーズ合同会社 永安悟史氏
  •  株式会社アイ・ティー・ワン 恩田佳弥氏
  •  ミック氏
  •  株式会社ラック 斉藤大輔氏
  •  IBM 野間愛一郎氏

モデレータ

  •  DB Online チーフキュレータ  谷川耕一氏

ビッグデータの普及とともに姿を変えつつある情報系データベース

野間氏:本日お集まりの皆さんは奇しくも、かつて2015年まで開催されていたデータベースエンジニア向け勉強会「Club Db2」の常連さんばかりですね!

」(谷川)
「Club Db2の常連さんばかりでうれしい!」(野間)

谷川氏:まずは皆さんが普段どのような形でDb2やデータベース全般とかかわっているのか、簡単に紹介していただけるでしょうか?

永安氏:私はもともとデータベースの研究開発に携わっていたのですが、その後ミドルウェア全般の仕事にかかわるようになりました。当時はDWH関連の設計・構築の情報がなかなか得られず、情報系に強いIBMさんなら何か有益な情報が得られるのではないかと思って、Club Db2にちょくちょく参加させてもらっていました。現在は主に、DWHの設計や、その周辺のデータマネジメントやデータガバナンスなどを手掛けています。

恩田氏:私は初めて関わったシステムがホスト系システムで、そこでメインフレーム版のDb2と出会いました。その後Oracle Databaseなども触ったのですが、やはり最初にかかわったDb2への思い入れが強くて、Club Db2にもなんとなく出入りするようになっていました。ただ現在はデータベースの仕事より、どちらかというと要件定義などの仕事の方が多いですね。

ミック氏:私はSIerで、主にシステムのパフォーマンス問題を解決するチームに所属してきました。パフォーマンスに関することなら何でも手掛けてきましたが、データベース製品ではOracle DatabaseとPostgreSQLを触る機会が最も多く、Db2に関しては皆さんほど深くかかわる機会はさほどありませんでした。ですので本日は、外の立場からいろいろ意見を述べさせていただければと思っています。

斉藤氏:私は逆に、これまでデータベースに関してはほぼDb2一筋でやってきました。主に銀行のお客様のシステム構築を長らく手掛けてきて、現在でもお客様先に常駐してシステム基盤の構築や運用を担当しています。個人的にも、Club Db2では大変勉強させていただきました。

「情報系データベースのあり方は変わってきていますか?」(谷川)
「情報系データベースのあり方は変わってきていますか?」(谷川)

谷川氏:本日はぜひ皆さんに、最近Db2が力を入れている情報系の事柄についていろいろお話をうかがえればと思っています。少し前から「ビッグデータ」がキーワードとして大きく取り沙汰されていますが、これによって情報系データベースのあり方が変わってきたという実感はありますか?

永安氏:情報系といえども、かつてはきちんとした方法論に基づいてモデリングやキャパシティプランニング、性能設計を行っていましたが、現在ではどちらかというと「とりあえずデータをためておこう」「たまったデータを試しに組み合わせてみよう」といったように、あまり先のことを考えずにデータを扱う傾向が強まったように感じます。

「あまり先のことを考えずにデータを扱う傾向が強まった」(永安)
「あまり先のことを考えずにデータを扱う傾向が強まった」(永安)

ミック氏:似たような傾向として、昔は基幹系と情報系がきちんと分かれていたのが、最近では両者を一緒に扱いたいというニーズが高まってきたように感じます。その背景には、情報をよりリアルタイムに活用したいというユーザーニーズと、基幹系と情報系を両方まかなえるだけの技術やリソースが実用化されてきたという事情があると思います。

「基幹系、情報系の両方をまかなえるだけの技術やリソースが実用化されてきた」(ミック氏)
「基幹系、情報系の両方をまかなえるだけの技術やリソースが実用化されてきた」(ミック氏)

斉藤氏:ただ、私が普段関わっている金融系のシステムだと、両者の融合はかなりハードルが高いというのが実感ですね。金融系システムは非常に高い可用性が求められるので、情報系の影響で基幹系の安定性が損なわれることは絶対にあってはなりません。従って、依然として両者を物理的に分離するやり方が多いと思います。もちろん、CSVファイルなどを介してのオーソドックスなデータ連携は行われていますが。

「金融系システムだと両者の融合はまだハードルが高い」(斉藤氏)

多種多様なデータを情報系データベースに一挙に集めたいというニーズ

「データレイクのようなニーズはある」(恩田氏)
「データレイクのようなニーズはある」(恩田氏)

恩田氏:私も、基幹系と情報系を一緒にするような提案をお客様にすることはないですね。ただ、データを活用したいというニーズは確実に高まっていて、いわゆる「データレイク」のようにいろんなシステムからデータを一箇所に集めたいという要望をお持ちのお客様はいます。また、何か問題が発生した際のデータのトレーサビリティを確保する目的で、データを同じ場所に集めておきたいというニーズも中にはあります。

永安氏:最近、いろんなところにあるデータを元の場所に置いたまま、“仮想的に”集めてくるというソリューションがはやってますよね。でも個々のデータベースでできることはそれぞれ違うので、「すべてを一律にSQLで集めてこられる」という謳い文句通りにうまくいくものなのかどうか、ちょっと微妙なのではないかと思っています。

谷川氏:Hadoopなどはその典型だといえそうですね。Hadoop上のデータを使うために、いったんリレーショナルデータベース上に転送する必要が出てきて、結局のところコストがかさんでしまうという話はよく聞きます。

永安氏:コストはかさむけれども、いったん“物理的に”どこか1つのデータベースに転送せざるを得ないケースはどうしても出てきますよね。けれどもその挙句、せっかく集めてもパフォーマンスが足りなくなって、結局はオンプレミスの高価なアプライアンスにデータを放り込むはめになってしまう!

ミック氏:ただ、いざとなればキャッシュを使うなどして無理やりパフォーマンスはひねり出せますから、考えるべきはむしろ機能的な要件の方ではないかと考えています。これから大事になってくるのは、ハイブリッドクラウドにおけるデータ連携のあり方ではないかという気がしています。いろんな業務システムがクラウドに移行する中、どうしても一部のレガシーシステムはオンプレミスに残さざるを得ません。そうしたシステムを今後より有効活用していくためには、データベースのデータをAPIやSQLのインタフェースを通じて外部から広く活用する仕組みが必要になってくるでしょう。

谷川氏:最近では、SNSのデータに代表されるような非構造化データも情報系データベースに取り込んで活用していこうという流れもありますが、このあたりのニーズは現場で実際に出てきていますか?

永安氏:ログをリレーショナルデータベースに集めたいというニーズは多いですね。ログデータは非構造化データといいつつ、実は比較的構造化しやすいので。

恩田氏:私が関わった案件でも、セキュリティ上の要件でログを保存したいというニーズがありましたが、データベースに入れるよりテキスト形式でとっておいた方が扱いやすい面もあるので、テキストデータとして管理していました。ログのような類のデータであれば、実はそういうやり方もあります。

IoTで露呈した「更新処理のスケーラビリティ」の問題

ミック氏:最近、IoT系のシステムにかかわる機会があるのですが、IoTシステムのデータベースではエッジデバイスから送られてくる膨大な量の更新リクエストをさばかなくてはいけません。これまでのデータベース技術はどちらかというと、「読み込み処理をいかにスケールさせるか?」に主眼を置いて発展してきましたが、ここに来て初めて「更新処理をいかにスケールさせるか?」という課題に直面しつつあるように感じます。

谷川氏:更新系は、どうしてもREDOの部分がボトルネックになってしまいますからね。アプリケーションの設計で逃げる手もありますが、そうなると今度はスケーラビリティが犠牲になってしまいます。

ミック氏:IoTの場合は、最終的にはフロントのエッジデバイスでデータをサンプリングして、データベース含むサーバサイドに渡すデータ量を調節するのが現実解になるかもしれませんが、まだ一般的なアーキテクチャのモデルが確立していない分野なので、今後しばらく試行錯誤がある気がします。

野間氏:ちなみにDb2のDBパーティショニング機能を使えば、シェアード・ナッシングで完全にログが分かれていますから、かなりの数の更新トランザクションもさばけるかもしれません。ただ、そのための構成を実際に組むとなると、コストは決して安くなさそうですね。

ミック氏:そうですね。シェアード・ナッシングでは、DBが保持するデータを局所化することになるので、業務要件の調整コストを考える必要があります。フロントでデータを間引く、キャッシュで受けてバックエンドは非同期更新、などの対策と合わせて、どうバランスを取ればいいのか今いろんな方々が考えているところなのだと思います。

永安氏:最近どうも、システムの費用対効果について昔ほど厳密に考えなくなってきている傾向にある気がしています。情報系データベースの製品も、慎重にプランニングすることなく導入して、使ってみたら「意外と高くつくぞ!」ということに初めて気付くようなケースが最近目に付きます。

谷川氏:Hadoopも一時期多くの企業が挙って導入しましたが、結局は多ノードで大規模に運用している企業はほんの一部に留まっているようですね。Hadoop自体は安くても、その基盤を構築・運用するためのコストがかなり掛かりますから。

永安氏:結局のところ、もともとのビジネスの規模が大きくないと十分な費用対効果が出ないという評価になってしまうんですよね。Hadoopがテレコムから入り始めたのもそういう背景があったからでしょうし、そういう規模感にフィットする企業が国内にどれだけあるかと考えると、なかなか厳しいと言わざるを得ませんね。

 以上で見てきたように、座談会の前半では近年の情報系データベースを取り巻く状況やトレンド、それにまつわるDb2の話題などについて活発な意見交換が行われた。なお後半では、基幹系と情報系のトランザクションを統合する「HTAP」やクラウドデータベースなど、最新のデータベーステクノロジーについての話題で大いに盛り上がりを見せた。その模様は、あらためて後編でお届けする。

――後編に続く

【関連記事】
本音で話そう、Db2の好きなところ、イマイチなところ
IBM Db2を選んでみたらこうなった
そろそろ、HTAPの話をしよう
今度こそ更新系と分析系は統合できるか?IBMが考えるHTAPのアプローチと現実

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