同社によると本調査において、従来から定点観測しているIT予算の増減傾向や製品・サービスの投資意欲の動向の変化に加え、国内の労働人口の減少の影響から企業において戦略的な対応が課題となっているIT人材の採用および教育・研修やAI技術の活用の期待について着目したという。
同社が発表した要点は以下の通り。
IT予算の増額傾向は堅調ながら増加の見通し
2018年度(2018年4月~2019年3月)のIT予算は、前年度から「増額」とした企業の割合が34%で「減額」とした企業の割合が7%となり、2017年調査と同様の水準を維持。
2019年度(2019年4月~2020年3月)に向けた見通しでは、「10%未満の増加」を見込む企業の割合が2ポイント増加しており、IT予算の増額が3割以上という傾向は維持される予想。
このIT予算の増減傾向を指数化した「IT投資増減指数」を見ると、2018年度の実績値は「2.74」となり、前年調査時の予想値(2.43)を上回っており、2015年度以降は堅調な伸びが見られる。2019年度の予想値は、「2.68」となり2018年度の実績値より下回っており、近年の前年予想値は実績値と同等かそれ以上となっていることから、企業において計画的なIT投資が定着していると考えられ、2019年も積極的なIT投資が実現できると期待される。
重点課題となるIT人材の獲得は中途採用にも前向きな姿勢
今回の調査では、将来に向け不足が危惧されているIT人材の動向を探るべく、IT部門の運営を支える正社員の採用状況を設問。その結果、IT部門の正社員採用を実施する企業はいずれの業種でも5割を上回っており、特に情報通信と金融・保険では約8割を占めていることから、IT人材の獲得が重要課題のひとつと認識されているといえる。さらに、IT人材の採用のタイプを「新卒重視型」と「中途重視型」と「採用なし」に分類すると、「中途重視型」はいずれの業種でも3割程度認められ、中途採用に前向きな姿勢が見られる。
年間教育・研修費の一人当たりの平均金額は16万円強
IT人材の育成に関する投資を見るため、2018年度の一人当たりの年間教育・研修費の平均金額を尋ねた結果では、平均金額は16.5万円であることが明らかになった。ただし、平均金額の分布を見ると20万円未満の企業がおよそ6割となっている一方、「50万円以上」と積極的に人材教育に予算を準備する回答も一定数存在しており、企業によりばらつきが大きいことが鮮明に表れている。
AI技術の活用は「人為ミスや事故の防止」「従業員の代替」に高い期待
IT動向の中でも近年注目度が高いAI技術について、期待する効果やサービスの利用状況について設問を追加し、AI技術の活用に対して期待する効果について、7項目の中から当てはまるものを複数回答で設問。最も選択率が高いのは「人為ミスや事故の防止」が5割に迫る数値で突出しており、次いで「従業員の代替」が3割近くで続いている。ビジネスの成長を促す手段としてデジタル技術の活用が喫緊の課題になるなど、IT部門の役割が広がっているが、AI技術は人材不足を補う手段として受け入れられやすい傾向が見て取れる。
本調査結果の全結果および分析は、『国内IT投資動向調査報告書2019』としてITRのWebサイトを通じて先行予約販売を開始。同レポートの発刊は11月中旬を予定している。