FRONTEOは、米国での訴訟におけるディスカバリ(証拠開示手続き)支援を、創業以来15年あまり手がけているという。米国では企業向けだけでなく、司法省の公的機関や市などの自治体にも、対象となる文書の収集から分析、提出までの一連のワークフローをワンストップで行う独自のシステム「Lit i View」シリーズを提供している。
現在、日本の行政機関では、年間約12万件もの開示請求が利用され(総務省発表、2017年)、約11万件の情報開示が決定されている。行政機関によっては、1日あたり平均50~100件を超える請求に日々職員が対応している。
国民や住民の「知る権利」に応える情報開示の対応は重要な業務である一方、現在の開示方法は、作業の効率性や精度に課題が見られるという。例えば、開示請求を元に、対象となる文書を選び出す作業において、キーワード検索を行うと、抽象度が高い内容では何度も検索しないと必要な文書が発見できず、多くの時間を要する場合がある。
また、開示の際に文書内の個人情報保護を行う作業は、パソコン上で人が目視で確認しながら作業を行っている。「情報開示対応システム」は、これらの作業を効率的かつスムーズに行い、省力化することができるという。
「情報開示対応システム」の概要
「情報開示対応システム」は、大きく分けて「準備プロセス」と「情報開示請求への対応プロセス」という2ステップで稼働する。
■準備プロセス
情報開示請求対象となるデータの整備をあらかじめ行う。機関や自治体が持つ、各種記録は様々な形式で保存されており、この準備プロセスが重要となる。
【収集】
・行政機関や自治体において、開示の対象となる期間や内容の記録を収集
【前処理】
・分析を行う際に必要となるテキストデータ化されていない紙の文書はOCRによりデータ化、またPDFや文字を含む画像などで認識できないものもテキストデータ化を実施
・同一項目、同一期間において、重複したデータが無いかを確認し、重複がある場合、1つを除いて、分析の対象から除外
■情報開示請求への対応プロセス
住民などからの開示請求が発生した場合、前処理済みのデータの探索・分析を行う。
【分析】
・請求の内容が具体的かつ限定されている場合は、日付などでの確認のほか、固有名詞などキーワードでの検索を行う
・請求の内容が、キーワード検索だけでは見つけることのできない“他の言葉を使っているが似た意味や文脈・ニュアンス”を持つ文書の発見には、FRONTEOが独自に開発した人工知能エンジン「KIBIT」を用いて分析を行う。KIBITは、探している対象の候補となる文書を類似性が高い順番で提示
【作成】
・開示対象の文書等が確認できた後、個人のプライバシーに関わる情報や機密情報などを開示する際に墨塗りを行う。必要と思われる箇所をシステムが自動的にあらかじめ指定し、職員が行う作業を大幅に減らすことができる
・今後、似たような請求があった場合に、迅速に文書を取り出すことができるよう、請求時の要件を付加して、案件を記録する
【提出】
・PDF化を行い、請求があった住民に行政機関・自治体を通じて提出
「情報開示対応システム」では、以上の作業を一貫したワークフローで行うことができる。これらの技術は、FRONTEOが2005年から米国のディスカバリ支援のために開発したもので、現在も日々使用されているという。
FRONTEOは、このシステムを通じ、行政機関や自治体などの業務を効率化しつつ、情報公開制度の意義も実現する仕組みを提供し、行政サービスにおいても、AIが支援できることはAIを活用し、人にしかできない高度な業務を職員が注力できる環境づくりを目指していくとしている。