現在、多くの企業が、市場ニーズへの追従や市場競争力の強化、収益の安定化などを目的に、自社のビジネスドメインにおけるサブスクリプション・ビジネスへの移行や展開を指向し、サービス市場への参入を進めている。
企業利用のPCに関しても、すでに米国ではPCの選定・調達から、各種運用管理、廃棄、そしてリプレースに至るライフサイクル全般の業務がサブスクリプション型サービス―PC as a Service(PCaaS)として提供されており、ユーザー企業から注目を集めている。
そこでITRでは、2019年6月に、従業員数50人以上の国内企業でPCの調達・展開・運用に関与するIT部門の従業員を対象にアンケート調査を実施し、PCライフサイクル管理の現状および今後のPCaaSに対する期待や検討事項について調査した(有効回答:394件)。
まず、PCの調達形態を確認した結果、半数強の企業が「買い取り」(52%)とし、次いで「リース調達」(45%)が続き、両者で9割以上を占め、PCaaSなどの「サービス利用(サポートとセットになった業務委託やアウトソーシングなど)」は2%とごくわずかにとどまった(図1)。
回答企業をPCユーザー数別に見ると、PCユーザーが多い企業ほど「リース調達」の割合が高い傾向が見られ、500人を境にリースと買い取りの割合が逆転している。
次に、主要なPCライフサイクル管理業務において、PCaaSとして提供されることが望ましい運用管理項目を尋ねた結果、選択率が高かったのは「PC機器保守」「Microsoft Officeライセンスの購入・管理」「OSライセンスの購入・管理」「セットアップ/キッティング」「PC機器調達(リプレース計画や機種選定含む)」「OSパッチの配布・適用」であり、4割から6割弱となった(図2)。 これら6項目は、本調査にて「自社IT部門での業務負荷が課題となっている」あるいは「IT子会社/PCベンダー/運用管理サービス会社の提供内容が不満である」項目として、20%以上の企業が選択した項目(ヘルプデスクを除く)と同一であり、現状における課題と不満が、PCaaSの潜在的な需要につながる可能性があることが示唆されている。
これらを踏まえ、現在、企業がPCaaSに期待していること(複数回答)を見ると、「PCライフサイクル管理(調達から廃棄)の一元化」「TCO(総コスト)の節減」「PCライフサイクル管理の効率化」が、5割前後の企業に選択された。
この結果を、主に利用するPCの価格帯が「10万円未満」の企業と「20万円以上」の企業で比較してみると、20万円以上のPCを利用する企業では、「PC調達コストの平準化(予算計画・管理の課題解決)」や「PCの陳腐化リスク低減(用途に応じた柔軟なモデル選定と使用年数)」に期待する企業の割合が高くなっています(図3)。
また、「サブスクリプション・モデルによるPCの非資産化」や「PCやソフトウェアのパフォーマンス監視によるユーザーエクスペリエンス向上」も、10万円未満の企業よりも20ポイント強高い差がついており、高額なPCゆえ、リプレースに伴う調達コストとその資産計上の課題の大きさと、ユーザーへの快適なPC環境の提供を重視する傾向がうかがえる。
ホワイトペーパーでは、こうしたPCライフサイクル管理に関する調査結果に加え、PCaaSに対して最も期待されているコスト面に関して、運用管理負荷の軽減を含めたTCOシミュレーションについても解説されている。