国内トップシェアの運用管理ソフトウェア「JP1」を擁する日立は、中堅・中小企業向け市場に新シリーズ「JP1/Desktop Navigation」を投入する。同市場での運用管理ソフトに対するニーズは強いものの、IT専任要員の不在やコストの障壁もあって、実際の導入は進んでいない。ただし、運用管理は負担の大きい作業であることも事実で、ITを効率的に活用していかなければ、社内リソースを浪費する事態にもなりかねない。

このような状況を背景に、同市場におけるニーズの獲得を目指すのが「JP1/Desktop Navigation」だ。日立製作所 ソフトウェア事業部 事業部長の坂上秀昭氏は「長年培ってきたJP1の流れを汲みつつも、単なる機能制限版や低価格商品ではなく、全く別の製品シリーズとしてゼロから開発した。中堅・中小企業のお客様向けに特化した専用パッケージ」と語る。
新シリーズの開発に当たって、同社は実際の中小企業の運用管理者を対象に徹底したヒアリング活動を実施。市場に運用管理製品が数多く流通する中で、各社が導入に踏み切れない原因についても徹底究明した。
「これまでの管理製品はプロ志向の一眼レフのようなもの。カスタマイズ次第でさまざまな要求に対応できるが、使いこなすためには相応の時間と労力が必要になる。むしろ中堅・中小企業は、コンパクトカメラのように専門的な知識がなくとも簡単に使いこなし、必要な効果を上げられる製品を求めている」(日立製作所 ソフトウェア事業部 システム管理ソフトウェア本部 第2JP1設計部 部長大坂弘江氏)

新シリーズでは前述の分析をベースとして、「導入のしやすさ」「運用のしやすさ」「導入・運用コストの手ごろさ」といったコンセプトを全ての製品で踏襲していく。例えば、運用に大きく影響を及ぼすユーザインタフェース部分については、一般消費者向け製品のデザイナーとJP1技術者による共同プロジェクトを立ち上げ、より使いやすいユーザインタフェースを追求しているほか、こまめにユーザ評価を取り込めるような開発体制を整えた。
シリーズの第1弾として同日発表された「JP1/Desktop Navigation」でも、このようなポリシーは徹底されているようだ。同製品は、ソフトウェアライセンスやセキュリティポリシー、PC資産などを統合的に管理するソフトウェア。セキュリティポリシーを予め登録しているほか、エージェントレス形式を採用しているため、管理サーバへのインストールのみで導入作業が完了する。また、特別に学習を行なわなくても使いこなせるよう画面設計や操作フローをデザインした。その他、サポート費用もライセンス数によらず年間固定額としている。
「中堅・中小企業のために必要なものをゼロから積み上げ式に考えて製品設計を行なった。非常にいい製品に仕上がった」と関氏は自身を覗かせる。

今後、JP1/Desktop Navigationでは、1000人以下の企業でニーズの高い製品分野から順次リリースしていく。現在のところ、2010年に第2弾、2011年に第3弾をリリースする予定だ。販売網については、既存のJP1パートナーに加え、中堅中小企業と取引のあるパートナーとの協業を進める計画としている。