MM総研は、企業1,599社を対象に、企業における言語系の生成AIやLLMの利用動向を調査し、その結果を発表した。
調査概要
- 調査対象・件数:国内企業1,599社
- 調査方法:Webアンケート
- 調査期間:2024年3月18~22日
生成AI導入率は19%、25年度にかけて全社導入を進める
調査結果から、今回対象とした企業における言語系の生成AI導入率(本格的に導入済みおよびテストまたは部分導入済み)は19%だった。このうち本格導入している企業は6%で、導入企業の中でもお試し段階が多い状況にある。導入率は企業規模が大きくなるにつれ高まる傾向にあった。導入準備中の企業や導入を検討している企業が24%あり、2024年度に導入がさらに加速するとみられる。
導入企業と準備中・検討中企業に導入パターンを複数回答で尋ねた。最も多いのは「Webブラウザー経由で生成AIサービスをそのまま利用する」で60%だった。まずはOpenAIの「ChatGPT」やGoogleの「Gemini(旧Bard)」などのサービスを手軽に利用してみようという企業が多いとみられる。次に多いのはAIやクラウドのベンダーが提供するAPIを利用するパターンで、44%だった。「Azure OpenAI Service」や「Amazon Bedrock」などを使って自社にカスタマイズし、本格導入するニーズも半数近くあった。
生成AIの導入企業を対象に現状と今後の方針を尋ねたところ、今後2年で生成AIの活用ステージを上げていく考えであることがわかった。2023年度(現状)は「少人数での試験環境を構築して利用している」企業が74%と大半を占めた。目的や効果、本番活用のための導入方法を検討する1年だったといえる。2024年度は「特定の部門や業務で本格的に利用する」企業が64%に拡大し、前年度での計画・検証をもとに本番利用が進む。2025年度は69%の企業が「全社で本格的に利用する」方針だという。
多くの企業が業務効率化やビジネススピードの向上を目的として生成AIを導入している。現在利用している業務は、営業・販売が48%と最も多く、次いで情報処理・情報システム関連が40%、マーケティング・調査が37%と続いた(いずれも複数回答)。
導入にあたって課題を感じている企業は97%
言語系の生成AI導入にあたって「課題はない」との回答は3%に過ぎず、ほぼすべての企業が課題を感じている。いずれの課題も20~30%強に上り、課題が山積している状況。中でも「AIやデジタルの高度な知識・技術を持つ人材が足りない」「セキュリティやプライバシーの確保」が31%で並び、トップとなった。ユーザー企業によるIT人材の確保や内製化の流れがあるものの、生成AIのような最先端の技術を取り入れていくにはまだまだ人材面での課題が大きいという。
国産LLMに期待する企業は7割以上で、特にNTTへの期待が高い
生成AIが本番を控える中で、ベンダー各社も勝負の年を迎える。データ2のとおり、顧客の本番活用が始まるほか、2024年度には国産LLMの商用化が相次ぐからだという。国産LLMに「期待している」企業は72%と多く、導入企業や準備・検討中企業に限って集計すると約90%となるため、期待値は高い。その中でも最も期待されているのはNTTの「tsuzumi」、次いで富士通、NEC、ソフトバンクとなった。
国産LLMに期待する理由は、上位から「日本語や専門用語への対応」「費用を安く済ませる」「サポートの充実」「データを外部に出すことなく利用できること」の順となった。慣れた言語での利用と丁寧なサポートを求める声のほうが強いようだ。生成AIを既に導入している企業に限ると、オンプレミスや自社データセンターなどの専用環境での利用をしたい企業は9割と、需要が高いことがうかがえる。
導入はSIベンダーに期待
企業側で人材・ノウハウが不足していることからも、SIベンダーやコンサルティングファームによる支援は不可欠だとしている。生成AIの導入や利用拡大で最も期待するベンダーを尋ねると、1位はNTTデータ、僅差で2位は富士通、次いでIBM、NEC、アクセンチュアとなった。「生成AIに関する製品・サービスの提供が早い」「情報発信量の多い」ベンダーが上位に入っている。
デジタル関連の案件ではアクセンチュアが強みを発揮してきたが、生成AIについてはNTTデータ、富士通、NECなどのSIベンダーが上回った。実装フェーズに入っていることや、国産LLM開発の強みを活かして支援してもらえる点が評価されたとみられる。
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