日立製作所(以下、日立)は、Oracle Databaseを利用した基幹DBシステムのクラウド移行を支援する「クラウド移行支援サービス for Oracle Database」を販売開始した。

同サービスで活用するベストプラクティスを確立するため、日本オラクル、日本マイクロソフト、日立の3社が国内で前例のない取り組み[1]として「Oracle Database@Azure」環境で3社連携の検証を実施。大量オンライン処理では秒間数千のオーダーのトランザクションを問題なく処理できることを確認、大規模バッチ処理では単一クラウド内部に比べて一定の遅延が認められるものの、従来のAzureとOCI間で確認した遅延に比べて改善することを確認したという。
また、これらの性能や可用性は、DBサーバーとAPサーバーを可変ゾーンやネットワーク上にどのように配置するかにより、変化することを確認したとのことだ。同検証の第2フェーズとして、マルチクラウド運用における監視ツールの使い分けポイントや、障害切り分けなどに関する検証を3月31日まで実施し、同サービスの運用支援内容を拡充する予定だとしている。
同サービスの特徴
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検討フェーズ:移行対象の基幹システムに必要な要件を漏れなくアセスメント
- 顧客が利用中のOracle Databaseの現在のシステム要件や運用体制と、移行先の候補や希望要件について、ヒアリングを実施し、プラットフォームエンジニアが、コストバランスを含めたアセスメントを提示。これにより、顧客の要件の実現性と優先順位を明確化し、適切な環境や構成の選定を進められるという。同アセスメントには、日立のミッションクリティカル・システムの経験や同検証の成果にもとづくベストプラクティスを活用しているため、検討漏れを防げるとしている。また、アセスメントの後、顧客の固有の業務を想定した検証を実施する場合も、インフラ関連の検証を省力化し、顧客は業務観点に注力して効率的に検証を推進できるとのことだ
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クラウド環境構築・移行:DB環境の設計・構築・テスト工数と移行時の業務影響を最小化
- これまでの基幹システムやマルチクラウドの構築および同検証時の試行錯誤の経験から、基幹DBシステム用途のクラウド環境の設計・運用に関するベストプラクティスを確立し、最新クラウド技術に対応して更新していくという。これにより、顧客自身で設計や設定を検討する項目が最小化され、設計・構築・テストの品質を確保しながら工数を削減可能だとしている。また、本番環境をクラウドへ切り替える前に、必要となる大量の基幹データ移行も、ベストプラクティスにもとづき停止時間や業務影響を最小化できるという。加えて、DB移行にともなう業務アプリケーション改修についても、プラットフォームエンジニアの支援で効率化できるとのことだ
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マルチクラウド運用:複雑になりがちな障害時の対応などをワンストップで支援
- クラウドの責任共有モデルにおいてユーザー責任となる運用監視や問題発生時の切り分けは、マルチクラウド環境では特に複雑になるという。日立は、運用者向けに監視ツールの使い分けを支援するほか、運用開始後の問題解決についても、日本オラクルと日本マイクロソフトそれぞれの技術提携スキームに基づき、日立がワンストップで支援し、顧客の運用の確実さと効率を向上するとしている
クラウド移行支援サービスfor Oracle Databaseの価格と提供開始時期
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今後の取り組み
日立は基幹業務へのAI適用に向け、2024年から基幹データを活用したAIユースケースの検証を開始。たとえば、注文情報や在庫情報といった基幹システムにある業務データを、AIがリアルタイムに検索して回答するユースケースの実装方法の検証を行ったという。現在、クラウド上に分散した様々な形式の企業データを、AIでシームレスに分析する取り組みも進めているとのことだ。
注
[1]: Oracle Database@Azure環境を活用し、日本オラクル・日本マイクロソフトを含む3社が連携して、基幹業務を想定した検証を実施したことは、国内で前例がない。日本オラクル、日本マイクロソフト、日立調べ。
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