Zendesk、人間とAIの協働による「自律型サポート」を実現へ──AI事業は20億ドルへの拡大目指す
「Zendesk Relate 2026」現地レポート
カスタマーサービスプラットフォームを提供する米Zendeskは2026年5月18日~20日(米国時間)の3日間、フラグシップイベント「Zendesk Relate 2026」を開催。コアプラットフォームを活用した新しい戦略「自律型サポートワークフォース(Autonomous Service Workforce)」と、その実現に向けた製品アップデートが発表された。

多くの企業が直面するシステムとAIの分断は、一貫した顧客サポートを阻害し、顧客満足度の低下や解約を招く原因となっているという。基調講演に登壇したZendesk 最高経営責任者(CEO)のトム・エッグマイヤー(Tom Eggemeier)氏は、3年前にCEOに就任した際、自社内でもツールやAIが分断されていたことで顧客満足度が低下していた過去を明かした。「ソフトウェアやAIは単体では機能せず、優れたコードであっても分断された運用を修正することはできない」と同氏が指摘するように、各部署がAIを導入する従来の手法は限界を迎えている。そこで同社が提唱するのが、特定のタスクに特化したAIエージェントと人間の専門家がひとつのチームとして協働する「自律型サポートワークフォース」だ。
この体制の核となる基盤が「Zendesk Resolution Platform」。同プラットフォームは、データ、インテリジェンス、ナレッジ、ワークフロー、そしてガバナンスを単一のシステムに統合し、約180億件にのぼる対話データに基づいて構築されている。
さらに、あらゆるやり取りからインサイトを抽出してナレッジの欠落を自動で特定し、AIの精度をリアルタイムで向上させる「Resolution Learning Loop」を備えることで、AIエージェントが自律的に問題を解決する環境を支えている。
Zendeskは自社でこの基盤を導入し、カスタマーサービスに寄せられる問題の60%以上を自律的に解決しているという。人間の対応ボリュームを30%削減しつつ、顧客満足度を20%向上させる成果を上げているとした。
ガバナンスを備えたノーコード開発環境「エージェントビルダー」
プロダクト・エンジニアリング・AI担当プレジデントのシャシ・ウパディヤ(Shashi Upadhyay)氏は、自然言語でAIエージェントを構築できる「エージェントビルダー」を発表。企業は自社のポリシーやビジネスロジックに合わせたカスタムAIエージェントを容易に構築・展開でき、返品対応や請求処理といった複雑なケースもAIが自律的に判断して解決できるようになる。
あわせて、Forethoughtの買収により、メッセージング、メール、音声を横断して動作するオムニチャネル対応のAIエージェントも発表。Zendesk内だけでなく外部のサービス環境でも自社のAIエージェントを展開することが可能となるという。また、Amazon Connectとの統合を通じた音声AIエージェントの60以上の言語への対応拡張も発表された。
権限管理を徹底した社内ITサポートの自動化
ヘルプデスクなど従業員向けサービスの自動化では、2025年12月に買収したUnleashの技術を基盤とした専用の自律型AIエージェントが発表された。SlackやMicrosoft Teams内で動作し、SharePointやGoogle Driveなどを横断検索する際、既存のアクセス権限を順守するのが特徴だ。ソースレベルの権限を自動適用するため、機密情報へのアクセス制限など、強固なセキュリティ・ガバナンス要件を担保できる。
外部連携を簡略化する次世代統合規格「MCP」への対応
プロダクト担当バイスプレジデントのルーシー・フィールド(Lucy Field)氏は、Anthropic社が提唱したAIのユニバーサルコネクター規格「Model Context Protocol(MCP)」への対応を発表。MCPクライアントの活用により、障害発生時はSentryのエラーログ取得や、GitHubでのコード確認、Jiraチケット作成、Slackへの通知といった複数システムにまたがる処理をAIエージェントが自律的に実行できるようになる。また、MCPサーバーを介して、Zendeskのデータを、ChatGPTやGeminiなどの外部LLMに安全に接続・提供することも可能となる。
導入初日から機能する「エージェントCopilot」と管理者支援機能の拡張
プロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのクリスティーナ・フォンセカ(Cristina Fonseca)氏は、人間のチームを支援するAIアシスタント「Copilot」機能の拡張を説明。従来、AIアシスタントの実用化には膨大な初期設定が必要だったが、今回発表された「エージェントCopilot」はナレッジに接続するだけで手順を自動生成し、導入初日から機能するように設計されている。これに加え、ワークフローの変更を自然言語で指示できる「管理者Copilot」、ナレッジの欠落を特定する「ナレッジCopilot」、根本原因を分析する「アナリストCopilot」が追加され、あらゆる立場の業務効率化を後押しする。
成果ベースのプライシングと20億ドル規模へのロードマップ
ビジネスモデルの転換として、エッグマイヤー氏は「成果ベース(Outcome-based)課金モデル」の拡大を発表した。これは、AI評価モデルが「課題が確実に解決された」と検証した成果に対してのみ課金が発生する仕組みで、スパムや放棄されたチャットは除外される。
同氏は基調講演の最後、Zendeskの現在の成長スピードに触れ、「我々は今、20億ドル規模のAIビジネスを構築する道程にある」と話す。この数字についてエッグマイヤー氏は「単なる財務上のターゲットではなく、顧客の自律型サポートワークフォースを支えるために必要な規模の証明」であると強調した。「この変化は、印刷機の発明や産業革命、あるいはインターネットの誕生よりも大きなものだ」と述べ、企業に対して小さなステップではなく、大胆かつ迅速な行動の必要性を訴える。
AIを基盤とし、人間のエキスパートがそのシステムの設計者として活躍する未来を見据え「単にソフトウェアを出荷する日々は終わった。我々は皆さんと共に、新しいワークフォースを構築していく」と話し、締めくくった。
主な発表機能の国内対応状況一覧(2026年5月時点)
各機能の国内における提供スケジュールおよび対応状況は以下のとおり。
- 日本語を含めて一般提供(GA)開始済み:管理者Copilot、ナレッジグラフのコネクタ拡張
- 現在EAPを提供中(日本語対応済み):エージェントCopilot
- 現在早期アクセスプログラム(EAP)を提供中(将来的に日本語対応予定):エージェントビルダー、ナレッジCopilot、アナリストCopilot、AIエージェント向けアクションフロー、コンテキストグラフ、Zendesk Model Context Protocol(MCPクライアント)
- 2026年6月に早期アクセスプログラム(EAP)開始予定(将来的に日本語対応予定):品質スコア
- 今四半期後半に一般公開(GA)予定(将来的に日本語対応予定):音声AIエージェントのサポート拡張
- 今夏に早期アクセスプログラム(EAP)開始予定(将来的に日本語対応予定):従業員サービス向けAIエージェント、Zendesk Model Context Protocol(MCPサーバー)
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小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)
EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。
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