サイバーリーズン合同会社は2026年10月14日、2027年1月に社名とブランドを「レベルブルー合同会社(LevelBlue)」へ変更すると発表した。同社は、EDRを中心に築いた国内の顧客基盤を、MSS(マネージドセキュリティサービス)、MXDR、脆弱性管理、ペネトレーションテスト、インシデント対応へ広げる転機として、今回の変更を位置付けている。
記者会見には、米LevelBlueのアンナマライ氏と桜田氏が登壇した。日本では「LevelBlue MXDR for Microsoft」「LevelBlue マネージド脆弱性スキャニングサービス」「LevelBlue ペネトレーションテストサービス」の3サービスの提供も始めると発表した。
米国発の2社が一つになるまで
サイバーリーズンは米国発のセキュリティ企業で、日本法人は2016年3月にソフトバンクとの合弁会社として発足。2021年に合弁を解消し、以降は独立した事業会社として展開してきた。2025年11月にはLevelBlue, Inc.(以下LevelBlue)と合併したが、日本国内ではサイバーリーズンのブランドを維持してきた。同社によると、デロイト トーマツ ミック経済研究所の調査(2024年度)で国内EDR市場のシェアNo.1だという。
LevelBlueは、特定のソフトウェアベンダーや通信キャリアに属さない独立系のMSSP(監視・運用を請け負うセキュリティ事業者)だ。AT&Tのセキュリティ部門を母体に、約30年にわたり通信事業者の後ろ側で監視と運用を手がけてきた。アンナマライ氏によると、2,500名以上のセキュリティ専門家を抱え、世界17ヵ国で8,500社以上の顧客にサービスを提供している。
桜田氏によれば、LevelBlueは日本に拠点を持っていなかった。そこに国内で知名度の高いサイバーリーズンが加わることで、日本での事業を広げる狙いがある。会見ではサイバーリーズンのEDR技術と日本での顧客・パートナー基盤に、LevelBlueの運用人材、脅威インテリジェンス専門チーム「SpiderLabs」、プロフェッショナルサービスを組み合わせる計画が示された。
たとえばインシデント対応は、サイバーリーズンでも手がけていたものの、約700人規模の会社の中の限られたチームだったという。LevelBlueにはデジタルフォレンジックとインシデント対応(DFIR)の専門家が300名以上おり、桜田氏は「規模・深さ・幅が広がる」と説明する。
では、EDRはどうなるのか。「サイバーリーズンというというとEDR」の印象が強いことに触れたうえで、桜田氏は「EDRを捨てるつもりは一切ない」と明言した。後述する新プラットフォームも、同社のEDRの延長線上にあり、新しいEDRセンサーも並行して開発しているという。そのうえで、「今後はEDRだけの会社ではなくなる」と、今回の社名変更の狙いを語った。
ブランド変更が既存の顧客やパートナーに与える影響について桜田氏は、提供するモデルは拡張するもので、減らすものはないと話す。また、SpiderLabsの名で出している脅威情報のブログに力を入れる考えだ。顧客の関心は製品情報より、いま起きている脅威への見解にあるとして、その発信の場をLevelBlueブランドで提供していくという。
「可視化の範囲」を広げる新基盤「Indigo」
アンナマライ氏が掲げたのは、「可視化の範囲が、防御の範囲を決める」というメッセージだ。同氏は、これまでは個別の製品がセキュリティの個々の場面ごとに推奨されてきたと振り返り、企業内でどこまで見通せるかが継続的な防御の鍵になると述べた。
背景は攻撃の広がり方の変化だという。攻撃はエンドポイントから始まっても、盗んだ認証情報を使ってクラウドやSaaS、ネットワークへ横展開していく。企業内ではAIエージェントが正規ユーザーのように動く一方、攻撃者側もAIで攻撃の量を増やしている。端末だけでなく、ID、クラウド、ネットワーク、AIやデータまで横断して見通す必要がある、というのが同氏の説明だ。
この考えを具体化するのが、開発中のプラットフォーム「Indigo」だ。EDR、XDR、SIEMなどのデータを集約し、ID、エンドポイント、ネットワーク、クラウド、AIのテレメトリ(稼働データ)を一つの画面で確認できるようにする構想で、アンナマライ氏は間もなく日本とグローバルで提供を始めると述べた。
会見では、SOCアナリストと顧客が同じ画面で調査状況を共有するデモが示された。調査情報や脅威の文脈は自動で集約されるため、情報収集の時間が減るという。端末やユーザーの隔離といった対応策の推奨から実行までを支援し、MTTR(平均復旧時間)の短縮につなげる。
既存のサイバーリーズン顧客への配慮も盛り込まれた。1万件以上の既存の検知ルールはIndigoへ移行し、これまでの検知能力は失われないという。Windows、macOS、Linuxに対応し、日本でも使われるスクリプト型の攻撃手口「ClickFix」は、実行される前にエンドポイント上で検査してブロックできるとアンナマライ氏は説明した。
桜田氏は、ほかにもグループ会社単位で管理できるマルチテナント機能や、EDRが入っていない端末の洗い出しを新基盤の特徴に挙げた。本社グループは守れていても、グループ会社に隙が残るという課題を意識した機能だという。
日本で始まる3サービスと、Microsoftとの関係
日本で提供を始める3サービスは、運用、予防、検証の役割に分かれる。
LevelBlue MXDR for Microsoftは、Microsoft Defender XDRとMicrosoft Sentinelを使う企業向けに、24時間365日の監視、脅威ハンティング、調査、対応を担う。専属アドバイザーが設定の最適化も支援する。
マネージド脆弱性スキャニングは、脆弱性の検出にとどまらず、悪用される可能性や事業への影響を踏まえて、対応の優先順位付けを支援する。QualysやTenableなどの管理ツールに対応する。ペネトレーションテストは、攻撃者の視点で外部公開システムやWebアプリケーションなどを検証し、防御が機能するかを確かめるもので、対象の重要度に応じて4段階のテストを用意した。
LevelBlueはMicrosoftの検証済みMXDRパートナーとして、Defender XDRやSentinelの運用を請け負う立場にある。一方、Microsoft自身もDefender Expertsなどのマネージドサービスを提供しているため、製品では協業し、運用サービスでは競合する面がある。
桜田氏は、MSSは本来マルチベンダーで、EDRがDefenderやサイバーリーズンのEDRに限定される必要はなく、今後もさまざまな会社のEDRへサービスを広げていく見通しだと述べる。アンナマライ氏も、顧客が選んだ技術に合わせて運用を支援することをグローバルで学んだと話した。
3サービスの土台になるのがSpiderLabsだ。脅威インテリジェンスと攻撃的セキュリティを担う同チームについて、アンナマライ氏は、年間20万時間超のペネトレーションテスト、1,000回超の脅威ハンティング、9,000件超のインシデント調査を手がけていると紹介した。桜田氏は、ペネトレーションテストで顧客と作る攻撃シナリオは守る側のユースケースになり、検知ルールの質や誤検知の整理に生きると説明した。
こうした動向の背景には、膨大なアラート対応による運用担当者の疲弊や、高度な専門人材の不足がある。桜田氏も、最近の攻撃は未知の手口が増えたというより、従来の攻撃が猛烈な速度で繰り返されていると感じるという。
LevelBlueは100を超えるサービスを持つが、日本へは時期やリソースを見ながら順次展開する。今後18ヵ月は、ローカルでの提供体制の強化とポートフォリオの拡大を優先する。桜田氏は、3つ目以降のサービスにはAI関連が含まれると明かした。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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