ジョーシス(Josys)は2026年10月21日、従業員の端末がインフォスティーラー(認証情報を盗み取るマルウェア)に感染した際、アクセス権の停止から端末の初期化までを自動で実行する「Josys MDMサービス」を発表した。ポリシー設計から端末への展開、是正対応、月次レポートまでを同社が代行する運用型のサービスで、Windows、Mac、iOS、Androidに対応する。
同社は6月11日、検知した事象に対してAIがポリシーを決定し、是正アクションまでを担う「AutoGuard」を発表し、10月にはダークウェブ上の認証情報漏洩を24時間365日監視するサービスを加えた。今回はポリシーの適用先に端末を加えた。インフォスティーラーへの感染の可能性を検知すると、AIがポリシーに基づいて誰の端末かを特定し、アクセス権の停止から初期化までを一元的に実行する。初期化は担当者が承認する運用のほか、AIの判断で自動執行させることもできる。代表取締役社長 松本恭攝氏は「従来のSaaSはコックピットに座って手動運転するスタイルだった。AI時代の攻撃に対しては、守る側も自動で守る必要がある」と語る。
松本氏は背景として、サイバー攻撃の分業化を挙げた。認証情報を拾う役、パッケージにして再販する役、買ったデータで攻撃する役が分かれており、「闇バイトでリクルーターや指示役がいて被害が一気に広がったのと同じ構図が、サイバー攻撃でも起きている」と話す。
ジョーシスが6月時点で実施した調査では、日経225の96%(217社)で認証情報の漏洩を確認した。さらに74%(167社)の企業で、従業員の端末情報がダークウェブ上で販売されていた。松本氏は、167社すべてで感染端末の情報が売買されているとは断言できないとしつつ、「かなり多くの企業で、誰かの端末情報が送られ続けている」と述べた。
インフォスティーラーは、「Microsoftからのセキュリティ検証」を装ったメールなどを入口に、画面の指示に従ってコマンドを実行させる手口で端末に入り込む。ログインが起きた瞬間に認証情報を取って外部へ送るだけで、端末内を探り回らない。そのためEDRを導入していても検知されないケースが多く、松本氏は「端末の異変は、最近のインフォスティーラーではなかなか検知できない」と話す。
盗まれるのはID・パスワードに加え、セッションCookieや、IPアドレス、OSなどの端末情報だ。松本氏によると、Cookieが渡るとパスワードを持っていてもMFA(多要素認証)を設定していても社内に入られる場合があり、VPNも対象になる。パスワードを変更しても、入力した時点で暗号化前の情報が送られるため効果はなく、新しいパスワードを入力した瞬間に再び盗まれるという。同氏は「アイデンティティを守るには、同時に端末を守る必要がある」と強調した。
止める手段として松本氏が挙げたのは、感染が疑われる端末の初期化だ。購入時の状態に戻したうえで、盗まれたパスワードやセッションを無効化する。MDMがなければ、端末を回収して情報システム部門が手作業で初期化する必要があるが、端末の入れ替えは3〜4年に1回の頻度にとどまる場合が多い。MDMがあれば、遠隔で初期化を指示し、ポリシーを再適用できる。松本氏は「検知することよりも、止めること、初期化することのほうがセキュリティとしての実効性が高い」と判断し、MDMの機能向上に踏み込んだと説明した。
松本氏が示したキーマンズネットとトレンドマイクロの調査では、MDMの導入率は日本企業全体で約半数(52%)。頻繁に悪用される脆弱性のパッチをリアルタイムで処理できているのは導入企業の56%で、日本企業全体では25〜30%弱という。一般的な運用では、アラートを受けた情報システム部門が台帳を目視で確認し、業務への影響を見ながら対応を判断し、手作業で配布する。松本氏はこの流れについて、判断が属人化しやすいと指摘する。
価格は運用代行込みで1台あたり月額500円(税抜)。松本氏によると、他社の大手サービスは約1,200円、国産サービスはログ付きで500円、モバイル専用で420円程度で、いずれもポリシー設計、端末展開、是正対応は顧客自身が行う前提になるのに対し、価格優位性があると語る。インドとシリコンバレーの開発拠点で、従来の運用代行より何十倍も生産性の高い自動化技術を開発したことで、この価格を実現したと同氏は説明する。
ジョーシスが代行するのは、ポリシーの設計、全端末への適用、パッチ未適用や暗号化の無効化といった違反のリアルタイム検知と是正、毎月の分析レポートと改善提案だ。人・端末・SaaSは1つの台帳で紐付け、パッチ適用などはAIが自動で実行する。運用がうまく回っていない企業には、専任オペレーターが入って原因を特定し、解消する。運用代行の実績は2年、提供先は135社で、幕張に52人体制のオペレーションセンターを置き、ISO/IEC 27001とISO/IEC 20000-1の認証を取得している。
導入事例には、Excelなどに分散していた端末情報を一元化し、4,000台の運用の自動化を進める一般社団法人メディカルアライアンスと、既存MDMからの乗り換えを初期化なしで段階的に進めた、550台管理のレシピ動画サービス運営のクラシルがある。現在の顧客の40%は他社ツールからの乗り換えで、乗り換え支援は専任オペレーターが無償で対応する。
他社の製品との違いについて、松本氏は差別化点として2つを示した。1つは運用代行で、自社で運用しきれず脆弱性が残る問題を解消する点。もう1つは、検知時に自動で実行される「自動性」で、MDM単体のAIではなくJosysプラットフォームとの連携で処理する機能は世界でもユニークだという。
今後は、クラウド上と端末でのデータバックアップサービスを提供し、初期化しても業務に影響が出ない状態をめざす。あわせて、従業員の認証情報に加え、プラットフォーム企業の会員情報の漏洩もリアルタイムで監視する予定だ。会員情報の漏洩は企業の発表までに時間差があるため、早期の検知をめざす。ジョーシスは、検知・統制・実行に、万が一の際のバックアップ復旧までをつなぎ、アイデンティティを中心とした攻撃から顧客を守るとしている。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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