富士ゼロックス株式会社は、厚生労働省のガイドラインに準拠し、診療記録一点毎(一文書毎)に情報の真正性を保証できる電子保存システムを業界で初めて開発したことを発表。また、財団法人津山慈風会津山中央病院で本システムの実証実験を行い、実用性を確認したという。
本システムは、財団法人医療情報システム開発センターが提供する「MEDIS-DC HPKI署名用電子証明書」と、アマノタイムビジネス株式会社が提供する「アマノタイムスタンプサービス3161」を用いて、富士ゼロックスが開発したもの。
医療機関では、電子カルテを中心にIT化が急速に進みつつあるが、医療現場で作成される各種診療関連文書の多くはまだ紙ベースであり、電子的に作成された診療記録と紙ベースの診療記録を統合的に管理し、検索・活用ができるシステムへのニーズが高まっているという。しかし、診療記録を電子で原本管理するためには、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第3版)」に示された電子保存に関する要件である「真正性」「見読性」「保存性」を担保することが求められており、中でも「真正性」については、「いつ・誰によって作成されたかを明確にし、その保存情報自体にはいかなる追記、変更及び消去も存在しないこと(同ガイドラインから抜粋)」を確実に保証しなければならない。
富士ゼロックスでは、厚生労働省が認定する「HPKI(ヘルスケアPKI)」と、信頼できる時間源を用いたタイムスタンプを個々の診療記録に付与することで、第三者機関がその記録の真正性を保証できるシステムを構築。実際の医療現場での実証実験を通じて評価・改善しながら、実用化に向けた有効性を確認したとのこと。今回構築したシステムは、今後の医療情報の本格的なペーパーレス化の促進と、利便性の高い診療記録統合管理実現に向けた重要な基盤作りへ向けた第一歩となりそうだ。
実証実験を行った津山中央病院副院長 宮島孝直氏は、「診療業務に伴う膨大な量の情報を、確実に統合管理する事は従来の診療ワークフローを含めた見直しが必要となり、実地医療現場への導入展開は難しいと思われていた。現場の医療プロセスをできるだけ変えないように実業務のなかで実験を行い、今後の実用化に技術的な目処が立った」と語っている。