kintoneの売上げは堅調に推移、1700社を突破
今年の6月に業績発表では、増収、減益の発表をおこない、一時的に株価は下がったが翌日から回復したサイボウズ。減益の理由はkintoneへの投資であり、今ではその理解を市場にも得られているようだ。
冒頭、青野社長はオウンドメディア「サイボウズ式」に掲載された、東京糸井重里事務所の篠田CFOと山田副社長の対談記事「赤字って本当にいけないことですか?」が話題になったことに触れ、赤字ではなく「投資」であることを強調し、投資への意欲を語った。
「kintoneはここ半年伸びていて、現在1700社を突破した。オンプレミスと違い、解約があっても増加している。クラウドのビジネスモデルの強みが出てきている」とし、「キャッシュフローの面から考えてもクラウドのビジネスモデルでは小さくても早く配るということが鍵になる」と語った。
2011年に発表したkintoneは最初は販売パートナーも少なく、シンプルなPaaS直販だったが、その後信頼性高まり販売パートナーも増加。現在では、APIカスタマイズはSI経由でおこなうなど連携を強化しながら、大手の導入実績も伸びており、アサヒビール中国、JINS、DeNA、医療法人ゆうの森の実績と、ジュピターテレコム、三菱ふそうトラック・バスが準備中であることを述べた。
「重視しているのは、信頼性とエコシステム。大事なお客様のデータを預かりきちんと運用することだ。サプライチェーンにまたがるデータや医療法人などの個人情報もお預かりすることになる。エコシステムと情報基盤としての信頼を強化することを方針にしている」(青野社長)
Garoonとkintoneの連携を強化、脆弱性報告者への賞金も
9月のkintoneの新機能として、同社のGaroonとの連携強化を発表した。kintoneアプリのレコードを、Garoonの予定一覧に表示され、kintoneのレコードからGaroonに予定を登録することもできる。スケジュールと案件情報を紐付けたいという顧客のニーズに応えたものだという。
もうひとつの方針である信頼性強化について、運用基盤、稼働実績の公開をあげた。kintoneの稼働実績は99.9979%であるという。
また外部のハッカー的な協力者の協力を仰いだ「脆弱性報奨金制度」をおこなっているという。社内で検知されない脆弱性の発見者へ報奨金を渡している。これまでのところ、認定件数は83件、うち1件はkintoneだ。
「モダンなシステムであるkintoneは少ないものの、従来のサイボウズに関する脆弱性は出てくる。8月末までですでに報奨金は118万支払っており、今の段階で280万を予定している。どんどん増えていくのは嬉しくもあり不安もあるが、これについての予算の上限は考えていない。脆弱の報告があればどんどん支払っていく」(青野社長)
サイボウズスタートアップスは2年半で収益化をめざす
続いてサイボウズスタートアップス株式会社の代表取締役社長 山本裕次氏が同社の見通しを発表した。
同社では、kintoneのデータを帳票上に配置し、印刷するプリントクリエイターというサービスをおこなっている。現在のところ、最小限の体制で事項しているためホームページからの問い合わせのみで、訪問営業もしていないという。クラウドの会員制の売上を作る段階にあり、月に6、7件の受注という状況で、見通しとしては2014年内に月次35万、2年後で月次200万という売上げのスケールを目指すという。
クラウドプラットフォームとして、新しいSIの登場を促す
「B2Bのクラウドビジネスの収益化は難しい。今はまだファミコンが登場する前のゲームウォッチなどの時代。中核となるプラットフォームが根付けば周辺のビジネスも成立するだろう。そうした時代に生まれてくるのは、従来と異なる“新しいSI”だろう」(青野社長)
青野社長が語る新しいSIとは、従来の要求定義から始まり工数によって見積もりを提示し、何度も顧客訪問をおこなうようなビジネスではなく、「来店型、定額料金制、チケット制メニュー、その場でモックアップでつくる、短納期、下請けから直取引」といったSI像であり、そうしたビジネスが、kintoneのエコシステムから生まれているという。こうした企業の例として、ジョイゾーの定額39万円の「システムサンキュー」などを紹介した。
続いて青野社長は、最近のkintoneの成長ぶりを数字で示した。月額加算売上げパートナー比率は45%、月間トライアル申込は1200件、サイボウズカフェに来店し商談する企業は月間50社、上海でのセミナーへの日系企業の参加者社数は300社、月間新規導入社数は100社以上、月間の問い合わせ数は1000件を超えたと語る。
「Googleの検索では、kintoneの検索数は“柿ピー”を超え、オンプレミスという言葉と並ぶようになった」(青野社長)
ユーザーあたり、3Gに増量、サードパーティプラグインの公開
また11月から開始する新機能として、cybozu.comをユーザー一人当たり、従来の2Gから3Gに増量する予定だという。またkintoneでのサードパーティ制のプラグイン読み込み機能の追加を、2015年1月に予定していると発表した。これによって、サードパーティが、自社のプラグインを使って有償で販売するなど、ビジネスを展開することができ、企業の情シス部門は社内で作ったプラグインをグループや社内外で連携活用することができるようになるという。
こうした例から、今後も「製品信頼性、企業の信頼性、エコシステム」の方向性を展開していくことを、青野社長は強調した。