今回の調査結果によると、データセンターが大きくなるほど、サーバーラックあたりの保守運用コストは減少することがわかった。これはデータセンターの規模が大きいほど、大量のIT機器、空調設備、非常用電源設備などの運用を集中して行うことができるようになるためだ(スケールメリット)。
現在国内では、大規模なデータセンターが次々と新設され、小規模なセンターが統廃合されているのは、こうした理由によるものだ。
しかし、ある一定の規模よりもデータセンターが大きくなると、スケールメリットによるコスト削減効果は次第に小さくなることもわかった。具体的には、サーバーラックの収容可能台数ベースで1,000台を超えるような規模に達すると、規模をさらに大きくしてもサーバーラックあたり保守運用コストの削減効果は限定的になる。
こうした 大規模なデータセンターにおいては、運用効率を改善するためにさらなるスケールメリットを追求することはあまり意味がない、ということになる。
国内データセンターサービス市場は競争が激しくなっており、データセンター事業者間での事業統合や買収なども目立つようになっている。2015年12月には、エクイニクスがビットアイルの買収を完了した。さらに、電力コスト値上がりの懸念、建設コストの高止まりなどの要因により、データセンター投資は、しだいに投資効果を厳しく問われるようになっている。データセンター事業者が生き残るためには、大規模データセンターにおける 運用効率の改善の取り組みが必須になっている。
IDC Japan ITサービス リサーチマネージャーの伊藤未明氏は、「大規模データセンターにおいて保守運用コストを削減するためには、電力コストの圧縮が重要である。電力管理システムの整備、電気設備や空調設備の省エネ運転システムの導入などが進むだろう」と指摘している。
今回の発表について詳細は、IDCが発行したレポート「2015年 国内データセンター保守運用コストの動向調査」にまとめられている。