ビッグデータ技術が直接的に企業収益に貢献することを期待
国内ビッグデータテクノロジー/サービス市場は、2014年の前年比成長率が39.7%になるなど急速な成長を見せている。ビッグデータテクノロジーは、従来のBA(Business Analytics)のような単純なレポーティング/予測にとどまらずリアルタイム処理を内包したアプリケーション基盤となることで、直接的に企業の収益に貢献することが期待されている。
しかし、ユーザー層の拡大という面では課題を抱えている。IoT(Internet of Things)や FinTech(情報技術を活用した新しい金融サービス)などの応用事例が示されたことで、当初のネット系企業から大企業を中心とした一般企業に徐々に活用の場が広がっている一方で、自社のビジネスモデルや、技術的リソース、データ資源などを考慮してビッグデータテクノロジーへの取り組みを見送る企業も増加している。
このような課題が見られる中、IDCでは業務/業種特化型のビッグデータソリューションが今後の国内ビッグデータテクノロジー/サービス市場の成長に重要な役割を果たすとみている。特に国内企業においては北米などのビッグデータ活用の先進地域に比べてビッグデータ活用やアプリケーション開発に対応した組織や人的資源を十分に持たない企業が多いため、ベンダーやSIerの提供するビッグデータソリューションの役割はきわめて重要であるといえる。
競争力を支援するソリューションをスモールスタートできる環境の提供が重要
この調査では、ベンダー/SIerの名前を挙げて、ビッグデータソリューションの提供者として強いイメージを持つ企業をユーザー企業に聞いた。最も印象に残るベンダーとしては、国内企業では富士通がトップの10.6%、NTTデータが2位で8.5%の回答を得た。
一方、海外企業ではグーグルが9.3%、IBMが7.1%で続いている。富士通、日立、NEC、NTTデータなどの国内大手ITベンダーやグーグル、オラクル、IBMなどの外資ITベンダーは、各社ともビッグデータソリューションに注力しており、独自のソリューションと販売戦略を発表している。
今回の調査では、ミドルウェアやクラウドサービスも含めて独自の製品を持ち、ビッグデータイニシアティブとして包括的なソリューション体系をアピールした富士通がユーザーに強い印象を与えた結果となった。しかし、今後の各社のユースケース発表や取り組み訴求の仕方によって、ユーザー企業の印象は変化していくと考えられる。
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ マーケットアナリストの草地慎太郎氏は、「データアナリティクスによる生産性向上が世界規模で行われている中で、国内企業におけるビッグデータアナリティクスへの取り組みを支え、競争力の維持を支援するビッグデータソリューションの役割は引き続き重要である。ビッグデータソリューションは蓄積された業務/業種別のノウハウを活用しつつ重厚なインテグレーションを前提としたものから、クラウドを活用し、スモール/クイックな開発が可能なソリューションとして再構築し、利用企業の幅を広げていくことが求められる」と述べている。
今回の発表について詳細は、IDCが発行したレポート「2015年国内ビッグデータソリューション市場動向分析」にまとめられている。