外部からの脅威管理の導入が進んでいるが、内部脅威対策導入は遅れている
調査対象企業に対して2016年度(会計年)の情報セキュリティ投資の増減率を調査した結果、2015年度(会計年)と比べ「増加している」と回答した企業が26.9%となり、「減少する」と回答した企業10.6%を上回った。また、2017年度(会計年)の情報セキュリティ投資見込みでは、2016年度を上回るとした企業は全体の32.1%、「減少する」と回答した企業は10.1%だった。
そして、2017年度の情報セキュリティ投資を増やす企業は、アイデンティティ/アクセス管理を投資重点項目としている企業が多いことが判明した。しかし、6割近くの企業では、投資額は前年度と変わらないと回答している。2017年度の情報セキュリティ投資は、2016年度に続き増加傾向だが、まだ多くの企業は前年度と同額の予算で明確な投資計画を持たず、既存のセキュリティ対策への投資を継続しているとIDCではみている。
国内企業におけるセキュリティ対策の導入は外部からの脅威管理の導入が進んでいるが、内部脅威対策の導入は遅れている。しかし、クラウド環境へのセキュリティ対策では、ユーザーのアクセス監視/管理やシングルサインオンといったアイデンティティ/アクセス管理の導入率が7割超と導入が進んでいることが判明した。
導入が進むテレワーク環境へのセキュリティ対策が重要になる
この1年間でセキュリティ被害に遭った企業は全体の15.3%で、1割近くの企業がランサムウェア感染の被害を受けている。前回(2016年1月)の調査結果と比較すると、重大なセキュリティ被害に遭った企業は29.4%で前回調査の28.1%から増加し、さらに復旧や賠償金などにかかった費用が500万円以上と回答した企業は65.2%で前回調査の58.5%から増えている。
また、ランサムウェア被害に遭った企業の半数以上がバックアップファイルからの復元またはセキュリティベンダーに相談し複合化ツールで復元したと回答している。しかし、1割の被害企業では、要求通り金銭を渡し復旧していることが判明した。このように、セキュリティ被害が重大化している状況において、サイバー保険への加入率は現時点で17.2%ですが、加入を予定/検討している企業は4割程で、前回(2016年1月)の調査から増加しており、今後加入率が高まるとIDCではみている。
現在、政府は「働き方改革」への取り組みを推進している。今回の調査結果をみると、社外からのアクセスをすでに許可している企業は3割弱だった。そして4割以上の企業が、今後社外からアクセスを許可しようと考えている。このことからのテレワークの導入が進み、テレワーク環境へのセキュリティ対策が重要になるとIDCではみている。
テレワーク環境のセキュリティ対策は、企業が許可していないデバイスやアプリケーション、サービスを活用するシャドーITに対するセキュリティ対策が重要になる。
「企業は社外からアクセスするデバイスの管理だけでなく、クラウドアプリケーションの活用状況や利用しているユーザーのアクセス監視、そして活用しているデータに機微情報(慎重に扱われるべき情報)が含まれていないかを監視するコンテンツ監視などの機能を持った、クラウドセキュリティソリューションの導入を検討すべきである」と、IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーの登坂恒夫氏は述べている。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「2017年 国内情報セキュリティユーザー調査:企業における対策の現状」にその詳細が報告されている。調査レポートでは、2017年1月に実施した情報セキュリティ対策の導入実態調査の結果に基づき、国内の企業(官公庁を含む)の情報セキュリティ対策の導入実態と今後の方向性について分析を行っている。
調査内容には、情報セキュリティ投資、情報セキュリティ対策導入状況、情報セキュリティサービスの利用状況、個人情報保護法や情報漏洩対策に代表されるコンプライアンス強化への企業の取り組みなどが含まれる。