「ITセキュリティの強化」がプライベートクラウド導入促進要因に
国内市場では、従来型ITからクラウドへの移行を進める企業が増加している。クラウドへの移行をシステム領域別に見ると、電子メール、グループウェア、人事/給与、税務、経費といった汎用業務系システムは、パブリッククラウドSaaSへの移行が顕著だ。
一方、カスタムアプリケーションやアドオン開発を行った基幹系システムは、アプリケーションアーキテクチャを大きく変えることなく、クラウドインフラストラクチャに移行するクラウドイネーブルド(Lift & Shiftと称されることが多い)となるケースが多く見られる。このクラウドイネーブルドが、現在の国内プライベートクラウド市場の成長を牽引している。
国内企業のクラウドに対する期待も変化している。クラウドは登場して以来、「IT予算の削減」を導入の期待効果あるいは促進要因として挙げる企業が多いものだった。しかし、最近ではIT予算の削減よりも、「ITセキュリティの強化」や「ビジネスの迅速性の向上」を重要視する企業が増加している。
2017年3月に実施したユーザー調査「CloudView 2017」の結果によると、プライベートクラウドの導入促進要因として、「ITセキュリティの強化」を挙げる企業が最も多くなった。また、「IT予算の削減」は上位5項目には入らなかった。
「従来型ITからの移行」「DXのプラットフォーム」を両輪として高成長を継続
また、国内市場ではデジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)に対する関心も高まっている。なかでも、特定の産業に焦点を合わせ、新しい価値の創出を目的としたソリューションであるインダストリークラウドが急速に発展している。
インダストリークラウドでは、AI(Artificial Intelligence)、IoT(Internet of Things)、ブロックチェーンなどの先端技術を活用することが多く、DXのプラットフォームとしてホスティング型プライベートクラウドとして提供されることも多く見られる。DXのプラットフォームとしてのプライベートクラウドが、今後の国内プライベートクラウド市場の成長を促進するとIDCは予測している。
国内プライベートクラウド市場は、「従来型ITからの移行」「DXのプラットフォーム」を両輪として、今後も高い成長を継続するとIDCは予測している。
IDC Japan ITサービスのリサーチディレクターである松本聡氏は「国内プライベートクラウド市場は、新たな成長期を迎えようとしている。その成長を牽引するのはDXであり、ユーザー企業がITサプライヤーに求める内容、価値も変化している。一方、インフラストラクチャといった汎用領域では差別化が難しくなっているため、ITサプライヤーは特定業務や産業特化に注力することよって、自らの特徴や優位性を示すことが重要である」と分析している。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「国内プライベートクラウド市場予測、2017年~2021年」にその詳細が報告されている。