
かつて、運用系のシステムに携わっている担当者に仕事が楽しそうなイメージがなかった。業務をやらされている感が強かったからだろう。だが、現在の運用の世界では最新のツールやAI、自動化などの最先端の技術も活用でき、運用を取り巻く環境も大きく変わってきている。こうした技術によりルーチンワークは今後、どんどん自動化していくことになるだろう。そうなれば運用に携わる人たちの仕事がなくなるのだろうか?今回は、長らくシステム運用の業務に携わってきた運用スペシャリストである東芝情報システムの石井直史さんにシステム運用の重要性や仕事のやりがい、システム運用のこれからについて話を聞いた。
「人を動かす仕事」がしたかった
東芝情報システム SIソリューション事業部 ソリューション第八部(参与)の石井直史さんが学生だった頃、NEC PC-8800シリーズや富士通FM-7、東芝ならパソピアなどの「パソコン」が登場した。大学では文学部心理学専攻だった石井さんは、社会心理学を学ぶ中で同調現象をテーマとしていた。
「同調とはたとえば、ある人があるパターンのことをしたら、他の人が同じようなことをするかどうかを明らかにします。そのために実験などを行い、結果を検定します。その検定の過程で、BASICを使い統計処理を行ったのがPCに触った最初です」

東芝情報システム株式会社 SIソリューション事業部
ソリューション第八部 参与 石井直史さん
ここでPCに触れたからと、IT業界に就職したわけではない。石井さんは「人を動かす仕事」がしたかった。一つの就職先の候補が広告業界。広告を打ち人がモノを購入することは「人を動かす仕事」だと考えた。もう1つの候補が情報処理。データを処理しシミュレーションを行い「人がどう動く」かが明らかになると考えたのだ。結果的に、選んだのは情報処理の業界だった。
就職して最初の仕事は、東芝の青梅工場で制御系ソフトウェアを構築するものだった。当時のPCは簡単にLAN接続ができず、RS232Cケーブルを使いネットワークに接続する装置が必要。その装置に組み込むソフトウェアの開発を行った。
「通信プロトコルのソフトウェアで、OSI参照モデルではデータリンク層、ネットワーク層のプログラム開発でした」と振り返る。石井さんは3年ほど、LAN関連のプログラム開発に従事。この時は組み込み系ソフトウェアの開発だったので顧客の顔は見えず、人に直接関わる仕事ではなかった。
その後、通信系ソフトウェア開発からネットワーク関連のパッケージ製品を販売する部隊に異動する。ここではプログラムではなく、パッケージ製品を売るための企画系の仕事がメインとなった。この時に携わったのは、たとえばSun MicrosystemsにPCでNFS(Network File System)を実現するパッケージ製品があり、それを3comのネットワークボードなどと組み合わせて販売するビジネスだった。
他には、有償のWebブラウザ製品だったNetscapeの販売などにも携わる。「米国との契約や輸入手続きを行い、米国から人を呼びセミナーを開催するなども行いました」と石井さんは振り返る。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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