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GDPR、個人情報保護法…クラウドサービスを取り巻く国内外の法規制とリスク対応

 前回、利用者である企業側とサービス提供者であるクラウドベンダー側の責任範囲を明確にするためにクラウドサービス契約で意識すべきリスクについて解説しました。他にも契約だけでなく、クラウドを取り巻く法規制リスクにも着目する必要があります。契約は契約の当事者間で定める約束ですが、法規制は契約の当事者に限らず広く適用されます。当然、法規制の中には契約に優先されるものもあり、特にエンドユーザー保護にかかわる法規制には注意が必要です。今回は、クラウドサービスを利用する上で気を付けなければならないクラウドを取り巻く法規制リスクについて、個人情報保護規制に着目して解説します。

クラウドを取り巻く法規制リスク

 法規制リスクとは、自社グループに適用される各種法令や国・地域ごとに異なる法規制に対応しなければならず、法規制への対応を怠った場合に思わぬ制裁を課せられるリスクを指します。

 法規制リスクへの対応は、クラウドに限らず、オンプレミスの情報システムでも求められます。例えば、US-SOXやJ-SOXをはじめとした内部統制をめぐる法規制に対応し、情報システムにも内部統制を実装することが求められました。クラウドを利用する場合でも、内部統制に対応した各種機能を実装し運用しなければなりません。また、近年では、サイバーセキュリティへの対策強化が各国で進められており、当局規制としてサイバーセキュリティに対応した安全対策の強化が求められています。

 クラウドを利用する場合でも、各国の規制で求められる安全対策を実施しなければなりません。一方で、クラウドには、「匿名の共同性」「情報処理の広域性」「技術の先進性」といった固有の性質があるとされており(「金融機関におけるFinTechに関する有識者検討会報告書」2017/6 FISC)、クラウドを利用する上では、これらの性質を考慮する必要があります。

 オンプレミスでは、自社で構築する情報システムに採用するテクノロジーや安全対策はすべて利用者である自社で決定し統制できますが、クラウドでは採用するテクノロジーや安全対策を決定する主な役割はクラウドサービスベンダーに帰属し、サービス利用者が決定することは困難です。多くの場合、サービス利用者はクラウドサービスベンダーが実施する安全対策と運用に依拠せざるを得ず、クラウドサービスベンダーが公表するSOC2報告書等のセキュリティ担保を証明する第三者レポートを活用しなければなりません。  

 オンプレミスでは、情報処理やデータの所在は自社もしくは委託先のデータセンターに限られますが、クラウドでは情報処理やデータの所在地を特定できない場合があります。クラウド上の操作一つで容易にデータを国際移転できてしまいますし、利用者が意図せずにデータを国際移転されてしまいます。  

 オンプレミスでは、採用するテクノロジーや安全対策の選択は自社の責任であり、必要な対策を自社でコントロールできましたが、クラウドでは、採用するテクノロジーや安全対策は、クラウドサービスベンダーが提供する選択肢の中から選択することになります。クラウドサービスベンダーは先進的なテクノロジーを採用して機能を提供している場合もあり、利用者はテクノロジーの先進性を踏まえてクラウドサービスで利用する安全対策を評価・選択する必要があります。評価基準はテクノロジーの進歩に対応して柔軟に変化させていく必要がありますが、これは法規制についても同様です。

 テクノロジーの進歩と環境の変化に対応して法規制は常に変化していますが、身近で分かりやすい例が個人情報保護に関する法規制です。次項以降で、個人情報保護に関する法規制を例に具体的に説明します。

次のページ
個人情報保護規制の動向

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この記事の著者

関本 勘楠(セキモト カンナ)

KPMGコンサルティング株式会社 マネジャー
国内システムインテグレーター及び証券会社のシステム部門にて業務用システムの企画・開発・運用に従事した後、2012年にKPMGビジネスアドバイザリー(現KPMGコンサルティング)に入社。システムリスク管理態勢の構築支援やシステムの内部・外部監査支援、情報セキ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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