
クラウド技術は年々進化しており、各企業においては、ミッションクリティカルなシステムであってもクラウド環境で構築するケースも増えてきています。そのような状況において、経営層から「クラウドで大丈夫か?」と聞かれたら、どのように回答をするのが適切なのでしょうか。経営層を前にして、自信をもって回答できるならばよいのですが、実際にはなかなか難しいと思われます。今回は、経営層がそのような質問をする意図もくみ取りつつ、どのような回答をするのが望ましいのかを解説していきます。
経営層から「クラウドで大丈夫か?」と聞かれたら
まず、経営層から「クラウドで大丈夫か?」といった質問が出るのはどのような時でしょうか。今回はシステム投資審議において、クラウド環境の利用を前提としたシステムの構築を提案している場合を想定してみます。
経営層が気にかけるところは自社のビジネス目標を達成することであり、そのビジネスを支えるリソースとして、ヒト・モノ・カネ・情報の観点を大切にしている傾向があります。これらの観点から、経営層からの質問とその回答例を考えてみます。
Q:クラウド環境を利用することによってどの程度のコストメリットがあるのか?
まず、経営層はシステムへ投資することによって、ビジネス目標を適切な水準で達成しうるかという「カネ」の観点から質問するでしょう。特に、システムへ期待するビジネス目標への影響としてコストに対する意識が高いものと思われます。
オンプレミス環境と比較すると、クラウド環境を利用する場合、ハードウェアの購入コストがかからないので、サービスの利用時間や使用量等から算出されるランニングコストが中心となります。利用するクラウドのサービス形態にもよりますが、クラウドサービスの利用料金は使った分だけ課金される従量課金の方式であることが多く、どれだけ使用するのか事前に見積もって予算を確保する必要があります。
この場合、クラウドサービスの料金体系を正しく理解することはもちろんですが、クラウドサービスベンダーから提供されている見積もりツール等を活用して、利用料金の見積もり精度を上げて、具体的な金額を見積もることも重要です。ハードウェアの購入コストがかからないとはいえ、無計画にクラウドサービスを利用すると、オンプレミス環境を利用するよりもコストがかかってしまうリスクがあります。
使用しないサービスは停止させたり、利用する時間を限定させたりするなどの運用をあらかじめ計画しておくことによって、ランニングコストを大幅に削減することが可能になります。オンプレミス環境とクラウド環境の初期コストとランニングコストの比較を表1にまとめています。

【表1】オンプレミス環境とクラウド環境の初期コストとランニングコストの比較[画像クリックで拡大表示]
したがって、経営層の「カネ」の観点に対する質問については、どのようなコストがどれだけかかるかを見積もったうえで、以下のような回答例になります。
回答例
「当社のクラウドサービス利用形態は○○であり、1カ月当たりxxインスタンスをxxx時間の使用に限定することにより、ランニングコストは月額\xxxの見積もりに抑えています。これをオンプレミス環境で構築した場合のハードウェア購入費用\xxxxとランニングコストの\xxxxと比較すると\-xxxxとなります。したがって年間\-xxxの費用削減効果が見込まれます」
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- この記事の著者
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浅岡 優介(アサオカ ユウスケ)
KPMGコンサルティング株式会社 マネジャー外資系ITベンダーのアウトソーシング部門にて、顧客ITシステムの構築・運用業務に従事した後、2014年にKPMGコンサルティングに入社。同社にてシステムリスク管理態勢の高度化支援やBCP策定支援など、情報システムに係るリスクコンサルティング関連業務に従事。...
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