日頃、システム開発や運用に従事するソフトウェアに詳しいエンジニアも、ストレージに関する知識は意外とうろ覚えなままでいることも多いかもしれない。この連載では、システムに関わる者であれば押さえておきたい「ストレージの知識」を、最新の状況も踏まえ、雑学も楽しみながら身につけられるようにする予定だ。 今回は、その歴史的発展をなぞりながらディスクの構造や種類について解説する。
内周と外周の長さの違い
ディスク上には「トラック」と呼ばれる同心円状に配置されたデータの書かれた輪のようなものがあることは既に紹介したが、このトラック内に入るデータ量はトラックの物理的な長さにかかわらず、長い間同じサイズであった。一番極端な例で考えると、一番内側のトラックと一番外側のトラックはどう考えても円周の長さは違うのだが、人間からみて扱いが容易だという理由でトラックのサイズは同じとしていたのだ。
当然、少々無理がある話なので、結果として記録エリアとして利用できるのは内円と外円の中間部を中心とした部分になり、本当の意味での円盤の内側部分や外側部分は目をつぶって無駄にしていたのだ。無理があるといっても使いやすさには代え難く、この状態での利用は1990年代前半ごろまで続いた。ディスクは年齢的には50歳を少々越えているので、ディスク年齢で言うと生まれてから30歳前半まで続いた話である。
しかし、容量の進化を競争していく過程で、一番内側のトラックと一番外側のトラックでは長さが違うのだから、同じ容量であるというのはどう考えてもおかしいし、ついでに内円と外円の空いた部分にもデータが記録できれば、もっと記録容量を増やすことができるだろうという考えが起こり、ディスク表面を幾つかのエリアに区切り、そのエリアごとにトラック内に収容するデータ量を分けて記録しようとする技術が生み出された。この技術は「ゾーンド・ビット・レコーディング(Zoned Bit Recording)」と呼ばれており、今では標準的に採用されている技術となっている(図1-4)。

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佐野 正和(サノ マサカズ)
1986年日本アイ・ビー・エムの入社、本社SE技術部門で13年間ストレージ製品を中心に技術サポートを行なう。1999年にストレージ製品事業部に移り、以後、IBMストレージ製品の営業推進やソリューション推進、製品企画などの業務に携わる。現在、システム・ストレージ事業部でソリューション担当部長を拝任し、...
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