日本郵船、アクセンチュア、シティグループが組む船上電子通貨プロジェクト
日本郵船は、船上で独自の電子通貨による決済・送金が可能なネットワークの構築と電子通貨の発行の実証実験を進めてきた。キャッシュレス化することで船上の事務作業や紛失リスクを削減し、船員が運行業務に集中することを目的にしている。
今回、システムの開発でアクセンチュア、さらにグローバルな金融機能を強化するためにシティグループと提携することで、実現化のメドが立ち、2020年の初頭には、日本郵船の船舶上での利用を開始することになったという。
船上でのキャッシュレス化
なぜ、船上で電子通貨が必要なのか。主要な目的は、通信の不安定な船の上で、陸上からの給与支払い、船上での購買、船員同士や陸上にいる家族への送金などを電子通貨で行い、さらに船長の業務の電子化など、これまで現金でおこなってきた業務の効率化とリスクの低減をはかることにある。
「特長は、通常の仮想通貨と違い、現金化しやすいこと、ドルと連動した価値が安定であること。まずはこの土台をきちんと固めて、船上の決済からさらに汎用化を進め、国境を超えた決済や地域への貢献などを次のステップの目標にしたい」(日本郵船 丸山英聡氏)
「アクセンチュアとして金融業界の実績を活かし、堅牢なセキュリティを構築する」(アクセンチュア 土居高廣氏)
「シティグループの金融ネットワークによって、世界中で安心して国際送金でき、決済や融資、現金化を安定的におこなうことができるように協力していく」(シティグループ 児島勲氏)
新会社「MarCoPay」
今回設立された新会社は「MarCoPay Inc.」(マルコペイ インク)。所在地はフィリピン・マニラで日本郵船とTDG(Transnational Diversified Group)が、それぞれ50%で出資する。サービス開始は2020年の1月を予定している。
「MarCoPay」は主に外国人船員を対象にした、スマートフォンのアプリで、QRコードを使って電子決済、国際送金、最現金化ができる電子通貨プラットフォームを目指す。
船上での給与の支給や生活用品の購入、航海中でも自国への送金ができ、世界中のATMでアプリ利用者が現金として引き出せるようにする。
「船員の生活は平均すると、船上で9ヶ月。現金の管理のリスクや不安は大きく、また船長も給与の支給にともなう出納管理などの業務負荷が高かった。世界中の大型商船で動く資金は800ミリオンドルに登る。船員の課題を解決するための会社として設立する。現在フィリピン当局に電子通貨発行会社として認可を申請している」(日本郵船 デジタライゼーショングループ 藤岡敏晃氏)
今回の利用対象者は、フィリピン人をはじめとする外国人船員。フィリピンを拠点にするのは、世界中の船員の人数が150万人で、そのうち20万人がフィリピン人で、日本郵船のフィリピン人の船員が数千名に登ることが理由。電子通貨を開発するテクノロジーとしては、ブロックチェーンではなく、安定的な決済ネットワークのために従来型の技術であるという。