大企業で新規事業?それ誰ができるの?
新しいことを始めるというのは勇気が要る。企業で新規事業に挑戦しようとする人物というのは、デロイトトーマツベンチャーサポート 斎藤氏によると1%くらいだという。しかし新規事業を支援するための教育や制度を整備することにより、10%くらいまで引き上げることが可能だそうだ。
ベンチャーと比べたら、大企業にはリソースが豊富にあることが強みとなる。人しかり、お金しかり。一般的に大企業は「動きが遅い」とみられがちだが、いったん走り始めたら「ベンチャーが遅く見えるほど速くなれる」と斎藤氏は言う。
社内起業家のタイプは3つあると斎藤氏は言う。そもそも全くモチベーションがないタイプを「不燃型」とすると、起業家は何らかの形で「燃える」ことができる。1つ目は「可燃型」で周囲に押されて頑張れるタイプ。2つ目は「自燃型」で自らやる気になれるタイプ。3つ目は「着火型」で周囲をやる気にさせることができるタイプ。自燃型がいればいいが、そう多くない。可燃型は周囲の後押しで火がつくまでは不燃型だ。斎藤氏は「着火型をいかに引っ張って来られるか。(元はそうでなくても)着火型になってもらうかが大事」と説く。
そこにボーンレックス 室岡氏が「どうやったら見つけられるか?その先動かせるかが難しい」と質問を投げかけた。斎藤氏は「大企業を動かすには、現場、上司、役員の3層で考える」と言う。まずは何かに対して情熱がある人を現場で見つける。その後はチャンスを与える上司、さらにパトロンとなる役員も必要になる。この3層をうまく構成するのが大事だという。
現場は熱意が不可欠で、上司や役員は目利きが重要になる。いい判断ができるかどうかは経験による勘が大きく、斎藤氏は「Jカーブの感覚が分かるかどうか」と言う。新規事業を始めると、軌道に乗るまではいったん「J」の字のように潜る時期がある。そこから浮上するための手法論やノウハウがあるか、そうした経験があるか大事になるという。
ボーンレックス 室岡氏が「大企業だと現場に熱意ある人が生まれたとしても『そんなのニーズがあるのか』と冷や水を浴びせる上司もいる」と苦言を呈したところ、すかさずiDEAKITT.Incアドバイザー 徳永氏が「それは相談する相手を間違えている」と返した。現場や提案者は相談する上司をうまく選ぶ目利き力も必要になるという。いいアイデアでも上につぶされてしまっては元も子もない。
徳永氏は「大企業の新規事業で成功するパターンの背後には、いいパトロン(役員)がいる。『これはうまくいく』と見た役員が、新規事業の現場をそっと2年くらいかくまってあげている。加えて斎藤さんが言うように、裾野拡大のための制度作りも大事」と言う。
室岡氏は「暴論だが、大企業に入社する人というのは『食いっぱぐれないように』と、リスクをとりたくないから大企業を選んでいることが多い。そこに『新しいことをやれ』とリスクある道を命令されてもね」と、大企業で新規事業をアサインされてしまった人の苦悩にも触れた。
やはり気になるのはキーマンとなれる人物だ。どういう人物なら向いているのか、なれるのか。斎藤氏は「頑張れる人というのは何かしら理由を持っている。人生で谷を経験し、そこから社会をよくしたいという思いを抱き、社会に目を向けられるようになった人」と話す。苦難やリスクがあろうとも挑戦できるようになるには、何らかの精神修行を経験し、それを克服できた人なのかもしれない。
これまでの話の流れからしても、斎藤氏が言う自発的に燃える自燃型がよさそうだが、アサインにより動く可燃型でもいい結果を出せる人はいる。徳永氏は「どっちがいいかは(自分の中で判断が)揺れている。どちらにしても使命感を持ち、粘り強い人がいいようだ。ビジネスは諦めなければいつか成功するから」と迷いながら話す。