ハードウェアを自ら開発、販売し、それを自分たちのOracle Cloudでも活用する
主要なクラウドベンダーの中で、自らハードウェア製品を開発し、それをパブリッククラウドのインフラに利用し、一般にも販売しているのはOracleくらいだろう。なので現状のOracleのエンジニアド・システムは、Oracleのソフトウェア製品を動かすのに最適化するだけでなく、パブリッククラウドのインフラで動くことを前提とした設計にもなっている。
エンジニアが個人でOracle Exadataを購入し利用することは、価格からも現実的ではない。しかしOracle Autonomous Database Cloudのサービスなら、安価なサブスクリプション型費用で利用でき、それで市販されているExadataと同じものを利用することになる。SaaSも同様で「あらゆるOracleのSaaSは、Oracle Exadataで動いています」と言うのは、Exadataの開発担当シニア・バイスプレジデントのコディー・ウママゲスワラン氏だ。OracleはSaaSを含め、クラウドのビジネスにかなり力を入れている。同社のクラウドビジネスが伸びれば、自ずと稼動するExadataの台数も増えることになる。
Exadataは、自社クラウドだけでなく顧客企業のデータセンターなどで稼動するのオンプレミスでの利用も増えている。Exadataのビジネスが成功している理由の1つは、当初から取り組んできたミッションクリティカル用途に耐えうる可用性の高さ。「クラウド環境でミッションクリティカルなシステムを動かすようになれば、極めて高い可用性を求められます。Oracle Exadataはファイブ・ナイン(99.999%)以上の可用性を実現しており、フォルトトレランスのための機能を備えています」とウママゲスワラン氏は言う。
またExadataは、新しいテクノロジーにも積極的に対応し進化を続けている。これもまた、顧客の購入意欲を刺激するだろう。2019年9月に提供を開始した「Exadata X8M」では、永続性メモリ(Intel Optane DC Persistent Memory)と100ギガビットのRDMA(リモート・ダイレクト・メモリ・アクセス) over Converged Ethernet(RoCE)を組み合わせることで、ストレージ・ボトルネックを排除しOLTPもアナリティクスも、さらにはIoTやストリームデータからの不正検出や高頻度取り引きなどの過酷なワークロードにも対応できる性能向上を果たしていると、Oracleでは主張する。
この永続性メモリの活用は、インテルとの深いパートナーシップがあればこその成果。インテルとは3年、4年先の将来を見据え情報共有をしているとウママゲスワラン氏。インテルとはさらなるOracle Databaseの高速化の協業も進んでおり、データベースのセキュリティを高めてもそのための処理オーバーヘッドをチップレベルでほぼゼロにするような仕組みの開発にも取り組んでいる。
他のチップレベルの取り組みとしては、NVIDIAとの協業もある。現状、本来ならGPUでやったほうが効率的な処理命令をCPUで実行している部分もあり、そういった処理にGPUを活用できるようNVIDIAと協力している。
またストレージ部分での性能向上も、4、5年先のハードウェアの進化を見据え行っている。直近の新機能としてはストレージサイドで処理を行うスマートスキャンで、JSONやスペーシャル(空間)データタイプを扱えるようにした。さらにグラフデータも対象としており、構造化したデータだけでなくさまざまなデータタイプを効率的に処理できるようにしている。