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IT部門はCXとEXに無関心ではいられない──ガートナーが語る「従業員ジャーニー」理解の勧め

 従業員体験の向上が顧客体験の向上につながる。この因果関係を理解しているCIOは非常に少ない。だが、実は従業員体験の向上に投資する企業は、従業員の増加率、従業員の給与、平均売上高、平均利益などで、投資をしない企業を上回ることがわかっている。企業が従業員体験の向上に投資を行う上で、IT部門は決して無関係ではない。なぜIT部門も従業員体験に投資をするべきか。来日したガートナーのアナリスト ジーン・ファイファー氏に聞いた。

<p>ガートナー ディスティングイッシュト バイスプレジデント, アナリスト ジーン・ファイファー氏</p>

ガートナー ディスティングイッシュト バイスプレジデント, アナリスト ジーン・ファイファー氏

IT部門にも関係の深い従業員体験

――IT部門にとって、顧客体験(以降、CX)や従業員体験(以降、EX)は馴染みの薄い考え方です。IT部門がEXを重視するべき理由から解説していただけますか。

 IT部門はCXとEXの両方を重視するべきだと思います。IT部門にとって、顧客は誰かと問われると社内ユーザーを真っ先に考える傾向がありますが、もっと外部の顧客に注目するべきです。私はIT部門がEXについて考えることは2つあると考えています。一つはIT部門のメンバー自身が良いEXを得ること。IT部門が従業員エンゲージメントを高めることができれば、社内ユーザーにも外部の顧客にもより良い体験を提供することになるからです。もう一つは会社全体のEXを支えること。IT部門はEXを支えるプロセスとテクノロジーの両方を考慮するべきなのです。

――EXの向上とテクノロジーの関係についてはどう考えればいいのでしょうか。

 EX向上のためには、「テクノロジー」「カルチャー」「物理的な環境」の3つに着目することが重要です。テクノロジーでEXを支えることを考える場合、多くの人が想起するのはイントラネットです。とは言え、一昔前のイントラネットとは違い、「モダンイントラネット」は、IT部門が提供するテクノロジーを使い、ビジネス部門が必要とするアプリケーションを一つに集約するものです。ここで重要なことは、エンドユーザーが必要とするアプリケーションに、IT部門は制限をかけてはいけないということです。

――IT部門はビジネス部門を顧客と見立ててテクノロジーを提供してきましたが、禁止することは得意でも許可することは苦手です。IT部門は変わるために何をすればいいですか

 確かに、これまでのIT部門には障壁を築いてうまくいっていたところがあります。そうしてきたのにはそれなりの理由があったからですが、その背景にある懸念点はすでに解決されたと考えています。これから前向きなIT部門になるには、全体的な視野をもち、エンドユーザーが組織にリスクを持ち込むことなく、テクノロジーを利用できるような環境を担保することだと思います。

 これからのIT部門は、経営層から大きな文化的変革の実現を迫られることになるでしょう。ビジネス部門の成功を阻害しないCIOばかりではありませんから、多くのリーダーには努力が求められます。誤解しないでほしいのですが、私は何でもかんでもエンドユーザーの好きにさせるべきだと言いたいわけではありません。全体最適の観点からIT部門がテクノロジーとソリューションを評価した上で、ビジネス部門に正しいことをしてもらう。ビジネス部門や組織全体を傷つけないような環境をIT部門が担保しないといけないということです。

――IT部門には従来と変わらず目利きの役割が求められるということですか。

 その通りです。ITが精査してビジネス部門にあるべき姿の提案をするのです。そのためにはビジネス部門と共にITの役割を再定義し、障壁を作らないようにしなければなりません。ビジネス部門に迎合してなんでもYesと言う必要はありません。「たぶんできる」と言っているなら良い兆候です。IT部門として精査した枠組みの中での「できる」という判断からの答えだからです。

社内のエンドユーザーの体験向上につながる5つのペルソナ

――ファイファーさんが講演で紹介していたデジタルワーカーの5つのペルソナは、IT部門にとってとてもわかりやすい指針になると思います。これはガートナーが統計的な分析から導き出したものですか。

 5つのペルソナは私の同僚が作ったものなので、私自身は詳しい背景を知らないのですが、要点はそれぞれのペルソナごとに求める働き方が違うことにあります。テクノロジーを自分で試したいという人もいれば、IT部門が提供するものを使いたい人もいる。ワークスタイルが違えば、必要とするテクノロジーもペルソナごとに違います。自分で探求したい人たちにとっては、BYOA(Bring Your Own Application)がクリティカルなので、IT部門はその人たちが働きやすくなるよう、使いたいテクノロジーの持ち込みを許可する必要があるわけです。

 つまり、ペルソナごとにワークスタイルも求めるテクノロジーも違う以上、IT部門はそれぞれに合ったテクノロジーをテイラーメイドで提供しなくてはなりません。図1では5つありますが、これで全てではありません。よく私は「この5つはペルソナの事例に過ぎない」と話すのですが、企業ごとに最適なものは違うと思います。あくまでもガイドラインとして利用してほしいですね。

<p>図1:デジタルワーカーの5つのペルソナ 出典:ガートナー</p>

デジタルワーカーの5つのペルソナ 出典:ガートナー

――これまでのIT部門は、ビジネス部門に対して一律にテクノロジーを提供してきたので、様々な方向性があることを示すことはとてもいいアイデアだと思いました。ペルソナは5つではなく、10でもいいのでしょうか。

 組織ごとに状況が違うので、マジックナンバーはありません。3つが適切という会社もあれば、7つが適切という会社もあるでしょう。一つ言えるのは、10以上は多すぎるということです。10を超えると対応が複雑になり、コストがかさみます。ですから私たちは出発点として5つを提案しているのです。いくつのペルソナがあなたの会社にとってベストかは、どんな働き方をする人たちがいるかによります。重要なのは社員を理解することです。VoE(Voice of Employee:従業員の声)プログラムを実施し、社員がワークスタイルについてどんなニーズを持っているかを洗い出し、理解した上でペルソナを決めるといいと思います。

次のページ
従業員ジャーニーマップ作成での注意点

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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