CSRとしての災害対策
日本では昔から「向こう三軒両隣」といった相互扶助の文化がある。現代の企業間の関係を見ても、サプライチェーンモデルに代表されるように、大都市と地方の企業間のつながり、あるいは大企業と中小企業間との強固な利害関係が生じているのが、日本の産業の特性と言える。
実はこのような特性は、災害のようなリスクに対して策を講じる上では、複雑性を増す要素となっている。大都市に災害が発生すると、単に大都市内の企業のみが損害を被るだけでなく、その他の都市にある企業、極端に言えば日本全土に対して、連鎖的に損害が発生するという危険性を抱えているのだ。
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その逆も然りで、地方の災害が連鎖的に大都市の企業に損害を与えるという危険性も抱えている。

災害の危険性が高く、大都市の企業と地方の企業、あるいは大企業と中小企業同士が密接に結びついている我が国においては、事業継続計画は決して自社だけのためだけでなく、利害関係を持つ周辺企業・組織のためにも必要なのだ。
このように、災害時の事業継続対策は、個人情報保護やセキュリティと同じく、ある種の社会的責任(CSR)として取り組むべき重要事項と言える。